DNA二本鎖切断修復で働くMRN複合体、構成タンパク質RAD50の意義は未解明だった
東京医科歯科大学は10月6日、骨髄不全と免疫不全を伴う疾患の原因が、RAD50の異常によることを突き止めたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科茨城県小児・周産期地域医療学講座の髙木正稔寄附講座教授、小児地域成育医療学講座の星野顕宏寄附講座講師、金兼弘和寄附講座教授、発生発達病態学分野の森尾友宏教授、ドイツHannover医科大学のKristine Bousset氏、Thilo Dörk氏、国際医療福祉大学、近畿大学、国立がん研究センター、京都大学、名古屋大学らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Immunology」にオンライン掲載されている。
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MRE11-RAD50-NBN(MRN)複合体は、真核生物では、相同組換えや非相同末端結合による修復過程に先立って行われる、DNA二本鎖切断修復の開始段階において、DNA二本鎖切断の認識とシグナル伝達に重要な役割を果たしている。NBNとMRE11の異常はそれぞれヒトにおいて常染色体潜性遺伝形式をとるNijmegen染色体不安定症候群(NBS)と毛細血管拡張性運動失調症様疾患(ATLD)の原因としてすでに知られているが、RAD50の異常はこれまで世界でも3人しか知られておらず、臨床的ならびに血液免疫学的にどのような意義を有するかは、十分にわかっていなかった。新たに同定された骨髄不全と免疫不全を伴うRAD50欠損症の臨床的・血液免疫学的特徴を明らかにすることを目的とした。
骨髄不全や免疫不全などを認める女児でRAD50欠損を同定、野生型RAD50で細胞の異常回復
小頭症、精神発達遅滞、鳥様顔貌、低身長、骨髄不全、B細胞性免疫不全症を有する女児について、全エクソーム解析を行ったところ、RAD50遺伝子にこれまでに報告がない2つのバリアントが同定された。患者由来細胞の細胞生物学的な表現型を解析したところ、RAD50タンパク質の発現とMRN複合体の形成は認められたが、DNA損傷によるATMキナーゼの活性化は著しく低下していた。しかし、患者由来細胞株は、ATMキナーゼの活性化が低下しているにも関わらず放射線感受性は明らかではなかった。また、野生型のRAD50を患者由来細胞に導入することで、細胞生物学的な異常の回復を確認した。
RAD50はヒト骨髄細胞と免疫細胞において重要な役割を持つと判明
今回の研究結果より、「MRN複合体のひとつであるRAD50はヒトの骨髄細胞と免疫細胞において重要な働きを果たしていることが明らかとなり、RAD50の異常によって毛細血管拡張性運動失調症(AT)、NBS、ATLDと同様に先天性免疫異常症を発症することが明らかとなった」と、研究グループは述べている。
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