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脳の白質病変を検出し、皮質白質境界の誤判定を修正するプログラムを開発-京大ほか

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2023年10月03日 AM10:30

従来の皮質表面解析、白質病変を誤って皮質と認識の可能性

京都大学は10月2日、脳の白質病変が脳表面の画像解析におよぼす悪影響を発見し、機械学習を用いて皮質表面解析の精度を向上する手法を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の大井由貴医師と花川隆教授、理化学研究所脳コネクトミクスイメージング研究チームの林拓也チームリーダーらの研究グループによるもの。研究成果は、「NeuroImage」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

)は、2018年から始まった戦略的国際的脳科学研究プロジェクト(国際脳)において国際連携により神経回路レベルでのヒトの脳の動作原理等の解明、精神・神経疾患の早期発見・早期介入の実現を進めてきた。認知症や精神疾患の診断や治療法に重要な言語や運動、感覚に関わる脳の機能の多くは脳表面の大脳皮質に局在しており、大脳皮質に存在する神経細胞は脳深部の白質を通って互いにつながっている。

大脳皮質の構造に関連づけて機能を理解し解析するために開発された皮質表面解析では、皮質と白質を正確に区別することが欠かせない。このような解析はT1強調画像やT2強調画像というMRI画像を使う。高齢者の場合、MRI画像で白質病変と呼ばれる異常領域がよく見られるが、これまで白質病変が画像解析に与える影響はあまり注目されていなかった。白質病変はT1強調画像では暗く、T2強調画像では明るく見え、その色調は大脳皮質と非常に似ている。そのため、従来の皮質表面解析では白質病変を誤って皮質と認識し、皮質と白質の境界の推定、皮質表面の推定にも影響する可能性があった。

機械学習アルゴリズムで白質病変を検出、従来解析ワークフローに組み入れる方法を開発

そこで研究グループは、機械学習アルゴリズムを使用して白質病変を自動的に検出し、それを従来の皮質表面解析ワークフローに組み入れる方法を開発した。そして、この新しい方法が皮質表面解析を改善できるかを定量的に評価した。

今回の研究では、まず脳神経内科医2人が、43人の中高年のMRI画像を用いて、脳の構造を考慮して視覚的に白質病変を特定。次に、特定された白質病変のデータ(学習データ)を元に機械学習させて、学習されたシステムを使って学習データに含まれていない個人データから白質病変を検出した。手動または機械学習によって白質病変部位を推定し、既存の表面解析プログラムにおける皮質白質境界の誤判定を上書き修正できるように新しいプログラムを開発した。解析結果は、放射線科医により視覚的に検証するとともに、1,200人分の公開データセットを基準とした統計的な手法によって定量的に評価した。

白質病変に起因するエラーを有意に減少、白質病変が多い場合に効果的

研究の結果、従来の皮質表面解析手法では小規模な白質病変でも皮質表面の推定誤差を生じ、皮質厚や皮質髄鞘マップなどの解析にも影響を及ぼすことが示された。一方、今回開発されたプログラムでは白質病変に起因するエラーを有意に減少させ、特に、白質病変が多い場合に効果的だったという。すなわち、既存のプログラムでは白質病変により誤判定されていた皮質白質境界を修正し、皮質表面を正しく再推定するプログラムの開発に成功したとしている。

認知症などのMRI研究で、白質病変の誤判定による画像解析への影響軽減に期待

今回の研究成果は、将来的に、例えば老化や認知症といった中高年や高齢者が対象となるMRI研究において、白質病変の誤判定による画像解析への影響を軽減し、皮質表面解析の精度を向上させ正確な病態解明に貢献するとともに、個人の病態に応じた個別化医療の開発に寄与することが期待される、と研究グループは述べている。

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