医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 海外 > 世界の50歳未満のがん患者、約30年前に比べ79.1%増加?-204の国と地域のデータから

世界の50歳未満のがん患者、約30年前に比べ79.1%増加?-204の国と地域のデータから

読了時間:約 2分23秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年09月19日 PM03:00

過去30年で50歳未満のがん患者が大幅に増加

50歳未満のがん患者が世界的に急増しているとの研究結果が報告された。過去30年間で、この年齢層の新規がん患者が世界で79%増加しており、また、若年発症のがんによる死亡者数も28.5%増加したことが明らかになったという。英エディンバラ大学のXue Li氏らによるこの研究の詳細は、「BMJ Oncology」に9月5日掲載された。


画像提供HealthDay

研究グループによると、がんは高齢者に多い疾患であるが、1990年代以降、世界の多くの地域で50歳未満のがん患者の数が増加していることが複数の研究で報告されているという。Li氏らは、2019年の世界の疾病負担(Global Burden of Disease;GBD)研究のデータを用いて、若年発症のがんの世界的な疾病負担について検討した。GBD 2019から、204の国と地域における14〜49歳の人での29種類のがんの罹患率や死亡率、障害調整生存年(DALY)、リスク因子に関するデータを抽出し、1990年から2019年の間にこれらがどのように変化したかを推定した。

その結果、2019年に50歳未満でがんの診断を受けた患者は326万人に上り、1990年と比べると79.1%も増加していたことが明らかになった。29種類のがんの中で、乳がんは発症率と死亡率ともに最も高かった(発症率:13.7/10万人、:3.5/10万人)。1990年から2019年の間に発症率の伸びが最も大きかったのは上咽頭がんと前立腺がんであり、それぞれ年平均2.28%と2.23%ずつ増加したと推定された。

2019年の50歳未満でのがんによる死亡者数は106万人以上に上り、1990年から27.7%増加していた。10万人当たりの死亡率とDALYが高かった上位4種のがんは、、気管・気管支・肺のがん、胃がん、大腸がんであり、また、腎臓がんと卵巣がんは死亡率が急上昇していた。

2019年に若年発症のがん症例が最も多く認められたのは、北米(273.2/10万人)、オーストラリア(157.7/10万人)、西ヨーロッパ(125.6/10万人)であった。一方、年齢調整死亡率(ASDR)が最も高かったのは、オセアニア(39.1/10万人)、東欧(33.7/10万人)、中央アジア(31.8/10万人)であり、若年発症のがんが低・中所得国にも大きな影響を及ぼしていることがうかがわれた。

このような世界的な傾向を考慮に入れた上で研究グループは、2030年までに若年発症のがんの新規患者数は31%、それによる死亡者数は21%増加し、特に40代でのリスクが高まると予測している。

なぜ若年発症のがんが急増しているのだろうか。研究グループは、遺伝的要因はもちろんのこと、それ以外にも、赤肉と塩分の摂取が多く果物や牛乳の摂取が不足した食生活、飲酒、喫煙、運動不足、、高血糖も、がん患者の増加に影響している可能性があるとの見方を示している。

この論文の論説を執筆した英クイーンズ大学ベルファストのAshleigh Hamilton氏らは、「予防と早期発見のための対策を講じることが、若年発症のがんに対する最適な治療戦略の特定とともに喫緊に必要とされている」と述べている。同氏らは、「どのような治療法であれ、若年発症のがん患者に対する治療では、患者の特定のニーズに合わせた総合的なアプローチを取るべきだ」と強調している。(HealthDay News 2023年9月6日)

▼外部リンク
Global trends in incidence, death, burden and risk factors of early-onset cancer from 1990 to 2019

HealthDay
Copyright c 2023 HealthDay. All rights reserved.
※掲載記事の無断転用を禁じます。
Photo Credit: Adobe Stock
このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 海外

  • ロボットが動画で手術手技を学習、医師と同じくらい巧みに実行-CoRL 2024
  • 妊娠早期のビタミンD摂取が子の骨と筋肉の発達に好影響?-英研究
  • オメガ3は4種類、オメガ6は13種類のがんのリスク低下と関連-米研究
  • 大腸がん検診の新たな選択肢・血液検査、現時点では内視鏡ほど有効ではない?
  • 薬なしで皮膚感染症を制御できる可能性のある「電気絆創膏」、現在の研究の進捗は?