2004年のスギヒラタケによる急性脳症、原因は不明とされてきた
静岡大学は9月7日、2004年に発生したスギヒラタケ急性脳症を長年にわたり研究し、化学的に解明したと発表した。この研究は、同大農学部の河岸洋和特別栄誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Proceedings of the Japan Academy, Ser. B, Physicaland Biological」に掲載されている。
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スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)は日本では東北、北陸、中部地方を中心に広く食されていた美味なキノコだったが、2004年秋、このキノコの摂取による急性脳症が国内で発生し17人が死亡した。厚生労働省は研究班を組織したが「原因不明」と結論した。研究グループは、この急性脳症の発症機構を化学的に明らかにするために、キノコの研究を続けてきた。
スギヒラタケ中のPC・PPL複合体が血液-脳関門を破壊、PAが症状を惹起
結果として、このキノコから、タンパク質であるpleurocybelline(PC)とPleurocybella porrigens lectin(PPL)、低分子であるpleurocybellaziridine(PA)の3つの物質を見出した。そして、PCとPPLが複合体を形成することによってタンパク質分解酵素活性を示し、血液-脳関門を破壊し、低分子であるPAによって、このキノコによる特異な症状を惹起する、という「3成分による急性脳症発症機構」を提唱し、それらを動物実験などで確認した。
3つもの物質が毒性に関与、前例の無い食中毒解明のモデルケースにもなりうる
「この事件は戦後最悪の食中毒事件と言われている。そして、3つもの物質が毒性に関与する例は見受けられない。今後、起こるかもしれない前例の無い食中毒の解明のためのモデルケースになるかもしれない」と、研究グループは述べている。
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