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高齢者の帯状疱疹ワクチン接種に「プライマリ・ケア」の質が関連-筑波大ほか

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2023年09月04日 AM11:00

プライマリ・ケアの質の指標PXと帯状疱疹ワクチン接種との関連を検討

筑波大学は9月1日、プライマリ・ケアの質が高い高齢者ほど医師の勧めで帯状疱疹ワクチン接種を受ける傾向にあることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学医療系の稲葉崇助教と慶應義塾大学医学部医学教育統轄センターの春田淳志教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Primary Care & Community Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

帯状疱疹は水痘と同じウイルスが原因で起こる皮膚の病気で、神経に沿って痛みを伴う水疱が出現する。また、水疱が消えた後も帯状疱疹後神経痛として、痛みが何年も続くこともある。加齢が大きな危険因子となるため、高齢化が進む日本において罹患者が増加傾向にあり、80歳までに約3人に1人が罹患すると言われている。

帯状疱疹の発症を防ぐ帯状疱疹ワクチン(弱毒生水痘ワクチン)が2006年から米国で接種されるようになった。日本では米国に10年遅れ、2016年より接種が可能となった。近年はさらに効果の高い帯状疱疹ワクチン(不活化ワクチン)も登場しているが、どちらもあまり接種が進んでいない。

肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなどについてはワクチンの接種要因に関する研究が複数行われ、患者が最初に受診する総合的な診療「」のサービス内容が充実している患者ほど接種率が高いことが明らかになっている。一方、帯状疱疹ワクチンについては、接種要因を明らかにしたり、プライマリ・ケアの質との関連を調査したりする研究は、これまで存在しなかった。そこで研究グループは今回、プライマリ・ケアを定期的に受診している65歳以上の高齢者において、プライマリ・ケアの質の指標の一つである患者経験(Patient Experience:)と帯状疱疹ワクチン(弱毒生水痘ワクチン)接種との関連を検討した。

プライマリ・ケアを定期受診している65歳以上の高齢者228人を対象に調査

研究では、茨城県内でプライマリ・ケアの役割を担っている小規模病院(1か所)を定期的に受診している65歳以上の高齢患者を対象に、郵送によるアンケートを実施。調査時点で帯状疱疹ワクチン(弱毒生水痘ワクチン)を接種済みの高齢者を接種群とし、接種群と年齢・性別でマッチングした高齢者を非接種群とし、両者を統計学的に比較した。

統計解析には「二項ロジスティック回帰分析」を使用。PXの測定には日本で広く使われている尺度「JPCAT-SF」を使用した。また、医師や家族から帯状疱疹ワクチン接種を受けるよう勧められたかなどについても、併せて調査した。

医師からのワクチン接種の勧めはワクチン接種に対して強い影響を持つことが過去の研究からわかっていたため、中間因子であると考えて解析を行った。中間因子の解析には(1)暴露因子(事象)と中間因子の関連性を示す、(2)中間因子とアウトカム(結果)の関連性を示す、(3)中間因子を除いた解析で暴露因子とアウトカムが関連性を示し、かつ中間因子を加えて解析するとその関係は消失する、という3段階の解析が必要になる。

アンケ―トは接種群と非接種群併せて457人に郵送され、そのうち228人が解析対象となった。二項ロジスティック回帰分析を用いて、年齢・性別・友人や身内からのワクチン接種の勧めなど複数の因子の影響を統計学的に調整した上で、以下3つの結果が得られた。

プライマリ・ケアで受けているサービス内容が良い患者は、医師の勧めで接種の傾向

まず、暴露因子である「PX」と中間因子である「医師からの帯状疱疹ワクチン接種の勧め」には関連性を認めた(オッズ比/SD 1.49 95%信頼区間 1.04-2.12)。また、中間因子である「医師からの帯状疱疹ワクチン接種」とアウトカムである「帯状疱疹ワクチン接種」の間に関連性を認めた(オッズ比20.46 95%信頼区間 8.48-49.4)。さらに、中間因子である「医師からの帯状疱疹ワクチン接種の勧め」を除いた解析で「PX」と「帯状疱疹ワクチン接種」の間に関連性を確認した(オッズ比/SD 1.38 95%信頼区間 1.00-1.92)が、中間因子である「医師からの帯状疱疹ワクチン接種の勧め」を加えて解析すると、その関係性は消失した。

これらのことから、PXと帯状疱疹ワクチン接種には関連性を認め、医師からの帯状疱疹ワクチン接種の勧めは中間因子であることが明らかになった。つまり、PXが高い、すなわち「プライマリ・ケアで受けているサービス内容が良い患者の方が、医師が帯状疱疹ワクチンを勧めると帯状疱疹ワクチンを接種する傾向にある」ことが明らかになった。

多職種が連携し、プライマリ・ケアの質を上げていくことが重要

今回の研究のみでは原因と結果を直接証明することはできないが、プライマリ・ケアにおいて患者が必要としているサービスを十分に提供した上で医師が帯状疱疹ワクチン接種を呼び掛けていくことにより、帯状疱疹ワクチンの接種率が向上する可能性があることが判明した。

「PX(プライマリ・ケアの質)は医師だけではなく、多職種が連携していくことでより向上することがわかっている。今後、帯状疱疹ワクチンの接種率向上のためにも、多職種が連携してプライマリ・ケアの質を上げていくことがより重要であると言える」と、研究グループは述べている。

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