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SLE患者の「抗リボゾームP抗体価」が病勢を反映していることを発見-新潟大

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2023年08月28日 AM10:45

SLEの病勢と「抗P抗体価」との関連は不明だった

新潟大学は8月24日、)患者にみられる自己抗体の一種、リボゾームPタンパクに対する抗リボゾームPタンパク抗体(抗P抗体)の抗体価と、SLEの病状の激しさを示す各種検査結果や身体症状、炎症性サイトカインなどの血中濃度が相関することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科腎研究センター腎・膠原病内科学分野の金子佳賢医学部准教授、成田一衛教授、同大保健管理センターの佐藤弘惠准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Rheumatology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

SLEは免疫系の異常により、自分自身の体の構成要素に免疫反応を示す自己抗体が産生され、皮膚、関節、腎臓、脳神経などさまざまな臓器に障害を引き起こす。抗P抗体はSLE患者に見られる自己抗体の一種で、これまでの研究では、脳神経や腎臓、皮膚などの病変と関連を示したり、炎症性サイトカインの産生との関連を示したりしていたが、抗体価との数量的な関連については明らかな報告はなかった。

研究グループは2021年の論文で、抗P抗体をマウスに投与することで血液中のトリプトファンの分解が進み、トリプトファンを原料とするセロトニンが脳内で不足することにより、不安状態を引き起こすことを明らかにしている。今回は、トリプトファンの分解が実際に抗P抗体を持つSLE患者にも亢進しているか、また、不安状態が実際に多く生じているのかについても検証した。

抗P抗体価が高い患者はSLE関連の皮膚病が多く、ステロイドが必要

2008~2022年に新潟大学医歯学総合病院にSLEで入院したSLE患者80人の血清を用いて調べた結果、30人から抗P抗体が検出された。抗P抗体を有している患者は、皮膚に発疹が認められる割合が高く、また、抗P抗体価は病勢の強さを示す補体やインターロイキン10、インターフェロンα2などのサイトカイン、トリプトファンの分解を示すキヌレニン・トリプトファン比、治療に必要とされた副腎皮質ステロイド薬の内服量などに数量的な関連がみられた。

トリプトファンの分解促進で不安状態が惹起されるかは証明できず

このような数量的な関連は、同じくSLE患者で検出される抗二重鎖DNA抗体価では認められるものの、抗Sm抗体、抗RNP抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体の抗体価では、一部の限られた指標でしか相関はみられなかったという。このことから、インターフェロンαは皮膚病変やキヌレニン経路によるトリプトファン分解を促進する作用があり、抗P抗体の存在がインターフェロンα高値と結びつき、これらの病態が引き起こされたと考えられたが、「トリプトファンの分解促進で不安状態が惹起されるのか」ということの証明には至らなかった。

抗P抗体の中では「IgG3型」が最もSLEの病状と強く関連

また、抗P抗体の中では「IgG3型」の抗体が最もSLEの病状と強い関連を示した。IgG3はIgG型免疫グロブリンの中で最も強い免疫反応を惹起する抗体の型であり、SLE患者の病勢を強くする可能性があると考えられる。抗P抗体が検出される患者は、抗二重鎖DNA抗体も同時に検出されることがほとんどだが、抗二重鎖DNA抗体にIgG3型の抗P抗体が加わった患者では病状がより重くなっており、SLEにおける免疫反応に相乗効果を持つものと推察された。

今後は抗P抗体と免疫反応との因果関係の解明が必要

SLE患者に対するサイトカインを標的とした治療薬には、抗Bリンパ球刺激因子抗体と抗Ⅰ型インターフェロン受容体抗体の2種類あるが、抗P抗体価はインターフェロンα2濃度と関連があることから、抗Ⅰ型インターフェロン受容体抗体製剤の有効性が予期されるなど、抗P抗体価が抗体製剤を含め、治療薬の選択に活かされることが期待される。

「今後は抗P抗体と免疫反応との因果関係を解明し、治療によって抗P抗体が関連した免疫異常がどのように改善されていくのかを明らかにしていくことが必要になる」と、研究グループは述べている。

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