レケンビは、エーザイと米バイオジェンの共同研究によって得られた可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体で、「ADによる軽度認知障害・軽度認知症の進行抑制」を効能・効果とする。第III相試験を含めたフルデータを揃えて1月に承認申請を行い、7月に米国で正式承認を取得している。
同剤の作用機序は、強い神経細胞毒性を示すことが報告されているアミロイドβプロトフィブリルに選択的に結合し、ミクログリアによる食作用を介してこれを除去することにより、早期AD患者におけるADの疾患進行による臨床状態の悪化を抑制する。
用法・用量は、通常レカネマブ(遺伝子組み換え)として10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する。
同剤の投与中に脳出血を発現した場合に出血を助長する恐れがあるため、脳出血血液凝固阻止剤や血小板凝集抑制作用を有する薬剤、血栓溶解剤などを併用注意薬とした。
最適使用推進ガイドライン作成対象医薬品となっており、投与対象の患者や医療機関については、今回の議論の結果を踏まえ、中央社会保険医療協議会の議論を経て、ガイドラインを策定・公表するとしている。
これまでADにおける認知症症状の進行抑制薬では、アリセプトやイクセロン、レミニールがあるが、AD疾患修飾薬としては初となる。第III相試験では、18カ月の試験期間においてプラセボ群と比べ、統計学的に有意に認知機能と日常生活機能の悪化を27%抑える結果が示された。
この日の部会では、レケンビを承認後、医療現場でどのように使用するべきかをめぐり議論が行われた。委員からは、製造販売後調査で遺伝子多型による影響や有効性・安全性の情報収集に加え、18カ月以降の有効性に関する情報収集を行うよう意見が出た。
一方、安全性についてはMRIなどをしっかりと撮像し、アミロイド関連画像異常(ARIA)を管理すること、MRI画像からARIAを読影できるよう医師に対するトレーニングを実施するよう求める意見も上がった。
また、レケンビの承認に合わせ、体内診断薬である日本メジフィジックスの「ビザミル静注」(フルテメタモル18F)、PDRファーマの「アミヴィッド静注」(フロルベタピル18F)の一部変更承認も報告された。ADによる軽度認知障害・軽度認知症患者が対象となるため、PET診断や脳脊髄液でアミロイドβを確認することが必要とされている。国内400施設にPETが配備され、500台ほどある。
エーザイとバイオジェンは同日、「レカネマブの早期AD治療薬としての製造販売承認が了承されたことは、わが国のAD治療における大きな前進である」との共同声明を発表した。
その上で「早期ADに対する新たな治療手段として当事者様に適確にお届けするよう全力を尽くしていく」と意欲を示した。