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COVID-19の重症化抑止に、肝疾患治療薬「UDCA」が有効な可能性-東大病院

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2023年08月03日 AM11:21

海外でのUDCAによる感染予防効果を示唆する報告を、横断的・客観的に検証

東京大学医学部附属病院は8月2日、)が、新型コロナウイルス()の感染率には影響を与えない一方で、不顕性感染を増加させる、つまり重症化を抑止する可能性があることを日本で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院感染制御部の奥新和也特任講師(病院)、堤武也教授らによる研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Internal Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ワクチンや治療薬の開発が進みCOVID-19の管理は改善されてきたが、SARS-CoV-2感染の化学的な予防は依然として大きな課題となっている。2022年末に主に肝疾患の治療薬として汎用されているUDCAによるSARS-CoV-2感染防止の可能性が初めて報告された。さらに、米国の大規模なコホートでの後方視的な検討でもUDCAの内服とSARS-CoV-2感染の減少および症候性のCOVID-19の減少との関連が報告された。これらの報告は、COVID-19の予防におけるUDCAの有用性を示唆するものと考えられた。しかし、日本でも2022年初頭から優勢となっているオミクロン株では、無症状から軽症の感染が多く認められるようになっている。

このように、無症状や軽症であれば、感染者は医療機関を受診してCOVID-19の検査を行う機会が生じないため、実際には感染に気付かない症例が多く生じていると考えられる。UDCAを含む候補薬の感染予防効果を正確に評価するためには、感染割合を横断的に、より客観的に評価する必要があった。

UDCA内服患者と非内服患者のCOVID-19感染歴・不顕性感染を評価

研究グループは今回、2023年1~2月前半に同院消化器内科に通院した外来患者を対象として、問診によりCOVID-19感染歴の有無およびワクチン接種回数を聴取し、さらにSARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質に対するIgG-N抗体を測定することで、感染の自覚のない不顕性感染についても評価を行った。

そして、UDCA内服患者(55人)を、UDCA非内服患者(335人)およびUDCA非内服のウイルス性肝炎患者(118人)と比較した。さらに傾向スコアマッチングにより、年齢、性別、ワクチン接種回数を調整した形でも感染率の検討を行った。

SARS-CoV-2の感染率は有意差なし、不顕性感染はUDCA内服患者で多い傾向

全コホートの検討において、SARS-CoV-2の感染率は、UDCA内服患者、UDCA非内服患者およびUDCA非内服のウイルス性肝炎患者の間で有意差はなかった。

さらに、傾向スコアマッチングの手法で、群間での年齢、性別、ワクチン接種回数を調整した検討を行った。するとUDCA内服患者とUDCA非内服患者、UDCA内服患者とUDCA非内服のウイルス性肝炎患者、それぞれの比較において、感染率自体には明らかな差を認めなかったものの、不顕性感染についてUDCA内服患者で多くなる傾向が認められたという。

UDCA治療がCOVID-19の重症化を抑止した可能性

ここまでの結果からは、UDCAがCOVID-19の予防という観点においては不十分であると考えられた。しかし、背景因子を調整した傾向スコアマッチング後の比較において、UDCA内服患者では不顕性感染の割合が非内服の2群よりも高い傾向が示された。

これらの結果は、UDCA治療がCOVID-19の重症化を抑止し、それにより症状が無症状~軽症に抑えられることによって、感染を自覚する割合を低下させた可能性が示唆された。

新型コロナウイルス感染症重症化予防薬としてのリポジショニングに期待

今回の研究は、COVID-19の感染および重症化抑止効果が示唆され始めているUDCAについて、無症状者における不顕性感染の評価を加えて検討した日本および世界初となる検討だ。

「その中で、UDCAが不顕性感染の増加、つまり重症化抑止に寄与している可能性が示唆された。日本で開発され、長期の使用経験があり安全性が担保されているUDCAまたはその誘導体について、新型コロナウイルス感染症の重症化予防薬としてのリポジショニングや創薬への展開が期待される」と、研究グループは述べている。

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