医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > OTC医薬品の適正利用に、利用者のヘルスリテラシーが関連することを明らかに-筑波大

OTC医薬品の適正利用に、利用者のヘルスリテラシーが関連することを明らかに-筑波大

読了時間:約 3分11秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年07月28日 AM10:46

、安全性担保のためにヘルスリテラシーが求められる

筑波大学は7月19日、薬局での市販薬購入者にアンケート調査を行い、医薬品添付文書の理解度および市販薬による副作用出現時の対処行動と、ヘルスリテラシーとの関連を分析した結果を発表した。この研究は、同大医学医療系の舛本祥一講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Pharmaceutical Policy and Practice」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本においては、市販薬()によるセルフメディケーションが推進されており、2017年からセルフメディケーション税制が開始された。セルフメディケーションにより、不要な医療機関への受診や医療費が抑制される可能性がある一方で、不適切なセルフメディケーションに伴うリスク(誤使用、乱用、処方薬との相互作用や副作用など)も想定される。そのため、セルフメディケーションにおいて使用者の安全性を担保するためには、健康や医薬品に対する十分な知識を持ち、適切にセルフメディケーションが行われる必要がある。

近年、人々の健康に関する知識を測定する指標として、「」という概念が注目されている。ヘルスリテラシーとは「健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力であり、それによって、日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの」と定義される。医薬品を適切に利用するためには、自分の病状を理解していること、添付文書に記載の指示を守れること、薬剤師の指示に適切に従えること、などの要素を含むヘルスリテラシーが必要だ。これまでに、慢性疾患の患者については、代替医療(通常医療以外の治療)による副作用への適切な対処にヘルスリテラシーが重要であるとの報告がある。一方、OTC医薬品利用者のヘルスリテラシーの評価と、添付文書理解能力や副作用出現時の対処能力を評価した研究結果は、日本においては報告されていなかった。

OTC医薬品購入者アンケートで、添付文書理解度・副作用対処とヘルスリテラシーとの関連を分析

そこで、今回の研究では、薬局でOTC医薬品を購入した人々のヘルスリテラシーを評価した上で、ヘルスリテラシーと添付文書理解度、副作用への対処行動との関連を評価するとともに、市民のOTC医薬品の適正利用を促すためのアプローチについて検討した。2020年1~2月に、関東地方14か所の薬局店舗でアンケート調査を実施。対象は、調査実施当日にOTC医薬品を購入した20歳以上の成人とした。ヘルスリテラシーは、14-item Health Literacy Scale(HLS-14)日本語版を用いて、添付文書理解度は日本版LCS(Label comprehension study)を用いて評価した。

ヘルスリテラシーの高さは、添付文書の理解度の高さ・副作用出現時の適切な対処行動と相関

回答者151人のうち、欠損データがあった者などを除いた140人のデータを解析した。回答者の平均年齢は55.2歳、性別は男性50人(35.7%)、女性90人(64.3%)、HLS-14の平均は51.6、添付文書理解度の正答率は全体で57.5%だった。

年齢・性別・学歴・収入といった要因の影響を取り除いた解析を行ったところ、OTC医薬品購入者のヘルスリテラシーの高さは、添付文書の理解度の高さや副作用出現時の適切な対処行動と相関していた。また、相互作用的ヘルスリテラシーと批判的ヘルスリテラシーの下位項目で解析した場合も、添付文書理解度と関連があることが示された。すなわち、ヘルスリテラシーが高い人ほど、添付文書を良く理解することができ、特に相互作用的ヘルスリテラシーと批判的ヘルスリテラシーが、添付文書理解度と強く関連していた。このことは、周囲の人から情報を得られる能力や情報を批判的に吟味できる能力が、添付文書の理解度と関連する可能性を示している。

薬局薬剤師などに相談した利用者は全体の12.9%、薬局スタッフが積極的に介入を

今回の研究により、ヘルスリテラシーの高低により、医薬品添付文書の理解度に差が生じうることが示唆された。OTC医薬品の利用に際しては、医療従事者の助言を得ることが望ましいと考えられるが、実際に薬局の薬剤師または登録販売者に相談をしたという利用者は全体の12.9%だった。従って、セルフメディケーションの適正利用のためには、より積極的に薬局スタッフが利用者に対して介入を行っていく必要があると考えられるとしている。

セルフメディケーションの適正利用に向け、利用者のへルスリテラシー向上支援

今回の研究結果は、OTC医薬品の適正使用の前提となる添付文書の理解度において、ヘルスリテラシーの重要性を示唆する貴重な知見だという。セルフメディケーションの適正な利用に向け、利用者のへルスリテラシーの向上や、利用者に対して、店舗での販売者(主に薬剤師や登録販売者)による積極的なコミュニケーションと情報提供を含めた支援が求められる、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 前立腺がん、治療決定時SDMが患者の治療後「後悔」低減に関連-北大
  • 糖尿病管理に有効な「唾液グリコアルブミン検査法」を確立-東大病院ほか
  • 3年後の牛乳アレルギー耐性獲得率を予測するモデルを開発-成育医療センター
  • 小児急性リンパ性白血病の標準治療確立、臨床試験で最高水準の生存率-東大ほか
  • HPSの人はストレスを感じやすいが、周囲と「協調」して仕事ができると判明-阪大