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日本の労働者の「不眠症」、幼少期のいじめ被害やDV経験と関連-筑波大

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2023年07月24日 AM11:00

逆境的小児期体験で健康的に脆弱化、労働者の不眠症に及ぼす長期的影響は?

筑波大学は7月19日、幼少期におけるいじめ被害や家庭内暴力体験が「」と関連すること、特に、家庭内暴力の被害経験は、経験した時期が多いほど不眠症の可能性が高くなることを見出したと発表した。この研究は、同大医学医療系 笹原信一朗准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「F1000Research」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本においては、成人の不眠症が人口の10%程度に認められ、最も重要な健康問題の一つとなっている。一方、不眠症は、収入や婚姻状況などの社会経済的な要因や喫煙、運動不足、慢性疾患などの生活習慣要因と関連していることが報告されている。また、労働者においては、仕事のストレスが不眠症の職業的危険因子と考えられている。このように不眠症にはさまざまな要因が関わっている。

近年、成人の健康影響において注目されているのは、小児期の体験だ。18歳までの身体的、心理的、性的虐待や、いじめ被害、家族機能不全の経験は、逆境的小児期体験(Adverse Childhood Experience; ACE)と定義され、ACEを持つ人は健康的に脆弱であることが明らかになっている。(Domestic Violence; )被害もACEに含まれる。しかし、ACEが労働者の不眠症に及ぼす長期的影響については、世界的に見てもほとんど報告がなかった。労働者における幼少期のいじめやDV経験の不眠の影響を調べることで、仕事のストレスに加えて、これまで気付かれなかった労働者の不眠の新たな原因に光を当てることができる。 そこで研究グループは今回、日本の労働者を対象に、幼少期のいじめやDV経験が不眠症と関連しているか否か検討した。

DV被害経験は経験した時期が多いほど、不眠症の起こりやすさ「高」

研究では、茨城県つくば市を中心とした研究機関の労働者を対象として、筑波研究学園都市交流協議会労働衛生専門委員会(委員長:笹原信一朗)が2017年に実施した「第7回生活環境・職場ストレス調査」(無記名自記式ウェブ調査)のデータを二次利用し、20〜65歳の男性4,509人、女性2,666人(計7,175人、平均年齢44歳)について解析を行った。

不眠症については、日本語版のアテネ不眠尺度(Athens Insomnia Scale; AIS)を用いて測定した。いじめ被害経験については「これまでに、他の人からいじめられたことはありますか?(なし、小学校時代に経験、中学校時代に経験、高等学校時代に経験、大学以降に経験、無回答)」、DV被害経験については「これまでに、家族から暴力を振るわれたことがありますか?(なし、小学校時代に経験、中学校時代に経験、高等学校時代に経験、大学以降に経験、無回答)」という質問により聞き取りを行った。そのうち、いじめ被害経験とDV被害経験について「小学校時代に経験」「中学校時代に経験」「高等学校時代に経験」と回答した人を「幼少期での経験あり」として、不眠症との関連を解析した。

その結果、AISで不眠症と判定された者は2,997人(41.8%)だった。また、いじめやDVの被害経験は不眠症と関連しており、特にDV被害経験は、経験した時期が多いほど、不眠症であるオッズ比(起こりやすさ)が高くなった。この傾向は、年齢、最終学歴、世帯年収、婚姻状況、居住地、通院歴といった個人特性や、労働ストレスや所属、職歴という職業要因、運動や喫煙といった他の生活習慣の影響を考慮しても同様だったという。

客観的な睡眠時間や睡眠効率を評価し追跡調査へ

今回の研究成果により、幼少期のいじめ被害やDV経験が、労働者の不眠症と関連することが明らかにされた。いじめやDV被害などのACEを持つ労働者は、持たない労働者よりも、ヘルスケアサービスを求める傾向があることが報告されている。産業医や保健師などの産業保健職は、ACEを持つ労働者と面会する可能性が高いと予想されることから、そのような労働者を認識したときに、不眠症について注目することが重要であると考えられる。

「今後、活動量計などを用いて客観的な睡眠時間や睡眠効率を評価し追跡調査を実施して、いじめやDV体験の影響を、さらに検証する予定だ」と、研究グループは述べている。

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