全国の自治体が実施、後期高齢者の質問票に含まれる「フレイル関連12項目」
東京都健康長寿医療センターは7月10日、後期高齢者の質問票に含まれる「フレイル関連12項目」について、健康リスクがあると考えられる回答が4項目以上あるとフレイルの可能性があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同センター研究所・福祉と生活ケア研究チームの石崎達郎研究部長ら、大阪大学、慶應義塾大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Geriatrics & Gerontology International」に掲載されている。
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全国の自治体が実施する後期高齢者を対象とする健康診査(以下、健診)では、2019年度までは「標準的な質問票」を使ってメタボリック症候群に関連する生活習慣が把握されていた。しかしこの質問票では、高齢者に特徴的なフレイル等の健康課題を把握できない。そこで厚生労働省は2019年3月に後期高齢者の健診で使用する「後期高齢者の質問票」を策定し、2020年4月から全国の自治体で順次使用されている。この質問票は、高齢者の健康状態を総合的に評価することを目的に、15項目で構成されている。石崎研究部長は、厚生労働省の検討会メンバーとして質問票の開発と活用方法の検討に関与した。策定当初、この質問票で得られた回答一つひとつについて、健診の事後指導を行うことが想定されていた。しかし、高齢者の保健事業を担当する医療専門職はとても多忙であることから、「この質問票を点数化して健康課題を抱えるハイリスク者の選別ができないものか」という要望が寄せられていた。
そこで、石崎研究部長らは「後期高齢者の質問票」の尺度化の可能性を検討。2020年に実施した「SONIC研究」の郵送調査で得られたデータ(分析者数1,576人、平均年齢85.7歳、女性52.9%)を使ってフレイルに関する構成概念妥当性を検証。全15項目のうちの12項目を「フレイル関連12項目」と名付け、5領域((1)動機能(問7、8、9、13)、(2)栄養状態(問3、6)、(3)口腔機能(問4、5)、(4)認知機能(問10、11)、(5)社会的側面(問14、15))で構成される分析モデルを構築。確認的因子分析の結果、この分析モデルの適合度は良好で、「フレイル関連12項目」は統計的に独立した領域と解釈でき、その合計得点をフレイルの指標として利用できることを報告した。
12項目でフレイル識別を検討、後期高齢者461人対象
今回の研究では、「フレイル関連12項目」がどの程度の確からしさでフレイルを識別できるのか検討することを目的とした。フレイルの至適基準には、日本語版CHS(J-CHS)基準を使用した。分析対象者は「SONIC研究」2019年の会場調査参加者のうち、2020年の郵送調査で「後期高齢者の質問票」に回答した461人(平均年齢79.7歳、男性50.9%)。質問票の「フレイル関連12項目」について、灰色の回答項目数(点数)を計算した(12点満点)。
12点中4点以上でフレイル識別、感度55.8%・特異度85.8%
J-CHS基準で判定したフレイルの状態別に、フレイル関連12項目の点数を比較した結果、フレイル判定の3群では、健常(ロバスト)群(中央値1点)、プレフレイル群(中央値2点)、フレイル群(中央値4点)と、三群間で中央値は有意に異なっていた(P<0.001)。J-CHS基準で判定したフレイルを至適基準に使用し、フレイル関連12項目のフレイルの識別能を評価。フレイル関連12項目の点数はJ-CHS基準で判定されたフレイルを中等度の確からしさ(c統計量:0.79、95%信頼区間:0.73-0.85、p<0.001)で識別可能だった。点数が4点以上の場合にフレイルを識別できることが示され(分析対象者461人のうち4点以上の割合は19.5%)、その精度は、感度55.8%、特異度85.8%だった。
フレイルのハイリスク者を簡便に把握、地域高齢者のフレイル評価に有用
今回の研究で使用した「後期高齢者の質問票」は令和5年4月末時点で、全国の自治体の94.0%(1,639区市町村)で使用されている(厚生労働省調べ)。この問診票のフレイル関連12項目の点数で、フレイルのハイリスク者を簡便に把握できることは、地域における高齢者のフレイル評価に有用だという。具体的には、「後期高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」において、区市町村が個別的支援を実施する際の対象者抽出や支援後の評価、通いの場等の参加者を対象とするフレイル評価のツールとして有用だ、と研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター プレスリリース