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非定型的ゴーハム病、原因としてGasdermin D遺伝子変異を同定-東京医歯大ほか

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2023年07月04日 AM10:51

極めてまれな骨系統疾患、「遺伝的要因関与なし」と考えられていた

東京医科歯科大学は7月3日、非定型的ゴーハム病の原因が、Gasdermin D遺伝子のミスセンス変異によることを突き止めたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科運動器外科学分野の江面陽一非常勤講師(研究当時:難治疾患研究所フロンティア研究室・骨分子薬理学准教授)、同大難治疾患研究所のDaniela Tiaki Uehara特任助教(研究当時)、村松智輝助教(研究当時)、統合研究機構リサーチコアセンター長の稲澤譲治特任教授、JA長野厚生連佐久総合病院グループ佐久医療センター整形外科の福島和之部長、東京理科大学薬学部の早田匡芳教授ら、共同研究グループによるもの。研究成果は、「JBMR-Plus」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ゴーハム病は、骨消失病変を特徴とする極めてまれな骨系統疾患。若年者に発症する症例の多くにリンパ管腫を伴いやすいことから、日本ではリンパ管腫症とともに厚生労働省が特定する指定難病として扱われている。従来、同疾患には遺伝的要因は関与しないとされてきたが、近年、ゴーハム病にはいくつかの病型のあることも指摘されるようになり、遺伝的要因関与の可能性も浮かび上がってきた。

Gasdermin D遺伝子カスパーゼ切断部位にホモ接合性のミスセンス変異

今回研究グループは、長野県の佐久医療センターでゴーハム病と診断された1症例について、従来報告されてきた典型的なゴーハム病の症例とはやや異なる臨床的特徴を有することに気付いたという。発症年齢、リンパ管腫の有無、外傷既往の有無などの相違に加えて、同症例の両親はいとこ婚であったことが判明。遺伝子変異等の関与が想定されるため、同症例と兄弟の血液検体をもとに全エクソン配列解析を行った結果、Gasdermin D遺伝子内にホモ接合性の遺伝子変異が同定された。

同変異はアミノ酸置換を伴うものであり、単球・マクロファージ系細胞内のGasdermin Dタンパク質が病原体感染などの刺激に反応したカスパーゼによって切断される部位に一致していた。この切断によって、単球・マクロファージ系細胞における炎症性サイトカイン放出を誘導する細胞死がもたらされるが、同症例から採血した単球においてはこの切断が起らないことが実験的に証明された。そのため、非定型的ゴーハム病の原因が、Gasdermin D遺伝子のミスセンス変異によることを突き止めたとしている。

ゴーハム病の病型分類・病態解明、新規治療法開発への応用に期待

今回の症例のような遺伝子変異は、ゲノムワイドな大規模遺伝子多型のデータベースを探索しても、欧米人での登録はなかったという。一方、アジア系人種を元に探索されたデータベースでは0.03%程度の頻度で存在していた。ただし、この変異をホモ接合性に保有する個人はこれまで報告されていない。研究グループは、そのような遺伝子変異がヒトで特徴的な骨病変を生じることを初めて見出したとしている。

単球・マクロファージ系細胞における感染誘発性の細胞死と炎症性サイトカインの大量放出が起らないことと、骨消失病変形成の因果関係は必ずしも連結できるものではなかった。しかし最近、海外の研究グループが、成熟間近の破骨細胞内においてGasdermin Dタンパク質が2か所で切断されることにより生じた分子断片が破骨細胞の最終分化を抑制することを、遺伝子改変マウスを用いて明らかにしている。この結果は、今回の知見を消失性骨病変形成の原因として裏付けるものであり、Gasdermin D遺伝子変異に基づく新たな病型のゴーハム病が存在することが初めて示された。ゴーハム病の病型分類および病態解明と新規治療法開発への応用が期待される、と研究グループは述べている。

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