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母のスプレー製剤使用と子の腎泌尿器異常に関連の可能性、エコチル調査より-兵庫医大

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2023年07月03日 AM10:33

胎児期~1歳までの腎泌尿器異常頻度と母親の有機溶剤・スプレー製剤等使用との関連は?

兵庫医科大学は6月30日、子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)の約8万4,000組の親子のデータをもとに、妊娠中の妊婦の有機溶剤およびスプレー製剤を含む家庭用品の使用と、子どもが1歳になるまでに発見される腎泌尿器異常の頻度との関連について解析した結果を発表した。この研究は、同大医学部小児科学、同大エコチル調査兵庫ユニットセンターらの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Urology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

エコチル調査は、2010年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにすることを目的としている。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。同調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

腎泌尿器異常には、胎児期の腎発達異常を特徴とするさまざまな構造奇形が含まれ、小児の末期腎疾患の最も一般的な原因であり、小児慢性腎疾患の62.2%を占める。腎代替療法(腎移植、腹膜透析、血液透析)を受けた子どもの41.3%に泌尿器異常を認めたとの報告もあり、腎泌尿器異常の早期診断・治療は重要と考えられている。また、妊娠中の有機溶剤へのばく露と子どもの腎泌尿器異常の関連について調べた報告は散見され、妊娠中に有機溶剤にばく露した母親から産まれた男児の外性器異常(停留精巣、尿道下裂)の発症率が有意に高かったことが報告されている。

一方、スプレー製剤へのばく露と子どもの腎泌尿器異常の関連は報告されていない。今回研究グループは、胎児期~1歳までに発見される腎泌尿器異常の頻度と妊娠中の母親の有機溶剤およびスプレー製剤を含む家庭用品の使用との間に関連があるかどうかを調査した。

親子8万4,237人対象、生後1歳までに腎泌尿器異常と診断の子どもは799人

今回の研究ではエコチル調査に登録され、妊娠初期から生後1歳までに実施された約10万組の親子のデータのうち自己記入式質問票に有効な回答があった8万4,237人を対象とした。双胎は対象から除外した。このうち生後1歳までに腎泌尿器異常と診断された子どもは799人(0.95%)。妊娠中に母親の有機溶剤、スプレー製剤(防水スプレー、スプレー式殺虫剤、虫よけスプレー)、除草剤を使用したかどうかと腎泌尿器異常との関連について、母親の年齢、妊娠時のボディマス指数(BMI)、、腎臓病の病歴、喫煙状況、早産を共変量としてロジスティック回帰分析を用いて解析した。また、詳細な解析として、腎泌尿器異常を膀胱尿管逆流症、水腎症、停留精巣に分けた解析した。

防水スプレー使用の妊婦群、子は男女ともに1歳までの腎泌尿器異常頻度「高」

調査の結果、妊婦が有機溶剤または除草剤を使用した場合と、子どもが1歳になるまでに発見される腎泌尿器異常の頻度に関連性は認めなかった。妊婦が防水スプレーを使用した群では、使用しなかった群に比べて、男女ともに1歳までに発見される腎泌尿器異常の頻度が高く、男子では有意に高いという結果が得られた。

スプレー式殺虫剤使用の妊婦群、子は女児で1歳までの腎泌尿器異常頻度「高」

また、妊婦がスプレー式殺虫剤を使用した群では、使用しなかった群と比べて、女児の1歳までに発見される腎泌尿器異常の頻度が高いという結果であり、男子では差が見られなかった。虫よけスプレーの使用と腎泌尿器異常の頻度との関連性は男女ともに認められなかった。

防水スプレーは男児の膀胱尿管逆流症・スプレー式殺虫剤は女児の水腎症の頻度「高」

詳細な疾患別の解析では、妊婦が防水スプレーを使用した群では、防水スプレーを使用しなかった群に比べて、男児の1歳までに発見される膀胱尿管逆流症の頻度が高いという結果が得られた。妊婦がスプレー式殺虫剤を使用した群では、使用しなかった群と比べて、女児の1歳までに発見される水腎症の頻度が高いという結果が得られた。

今後、影響のあるスプレー製剤成分、ばく露量、時期などを明らかにする必要あり

研究グループは、今回の研究にはいくつかの限界があるとしている。まず、母親のスプレー製剤の使用は質問票への回答によって評価したものであり、客観性に乏しいと考えられる。また、スプレー製剤の使用時期は正確に把握できていない。さらに、スプレー製剤を使用した経験との関連は解析できたが、詳細に何と関連(例:使用した環境、含まれている成分など)があったのかは解析できなかった。最後に、生後1歳までに診断された腎泌尿器奇形のデータを使用したが、それ以降に診断された症例があった可能性があるとしている。

今後は、スプレー製剤を使用することの何が影響を及ぼしているのか、スプレー製剤の成分が影響を及ぼしているとしたらその成分や、ばく露量、時期などを明らかにする研究が必要であると考えられる、と研究グループは述べている。

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