大量飲酒は後年の筋肉量減少のリスクを高める
中年期や老年初期における大量の飲酒は、骨格筋量が減少するサルコペニアやフレイル(虚弱)のリスク増加をもたらす可能性のあることが、新たな研究で示唆された。英イースト・アングリア大学(UEA)ノリッジ医学部教授のAilsa Welch氏らによる研究で、「Calcified Tissue International」に5月25日掲載された。
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Welch氏はこの研究の実施に至った背景について、「加齢に伴う骨格筋量の減少は、後年の筋力低下やフレイルの問題につながる。アルコール摂取は、多くの疾患において修正可能な主要リスク因子であることから、われわれは、飲酒と加齢に伴う筋肉の健康との関係について調べようと考えた」と振り返る。
研究では、UKバイオバンク参加者の中から本研究の適格基準を満たした19万6,561人(37〜73歳、男性8万8,116人、女性10万8,445人)を対象に、アルコールの摂取量とサルコペニアの指標〔骨格筋量、除脂肪量(FFM)、握力〕との関連を、体格によるFFMの違いや喫煙状況、身体活動量などについても考慮して検討した。
その結果、骨格筋量とFFM%(体重に占めるFFMの割合)の値は中等度の量のアルコール摂取(男性:それぞれ6.8g/日、4.8g/日、女性:それぞれ14.7g/日、13.5g/日)でピークに達するが、摂取量がそれ以上増えると低下の一途をたどることが明らかになった。これらのアウトカムはアルコールを摂取しない場合と比べて、男性では、48g/日の摂取でそれぞれ0.23%、0.47%、80g/日の摂取で1.34%、1.55%、160g/日の摂取で3.59%、3.64%低く、女性では80g/日の摂取でそれぞれ0.57%、1.10%、160g/日の摂取で4.92%、6.10%低かった。これに対して、握力の強さはアルコールの摂取量の増加に伴い増強していた。
研究論文の筆頭著者である、UEAノリッジ医科大学のJane Skinner氏は、「ほとんどが50〜60歳代だった本研究参加者において、体格やその他の要因を考慮しても、アルコールを大量に飲む人ではあまり飲まない人に比べて骨格筋量が少ないことが明らかになった」と述べる。その上で、「ワイン1本やビール4〜5パイント(英国での1パイント=568mL)に相当する、1日に10ユニット(1ユニットの純粋アルコール量は約8g)以上のアルコールを摂取する人では、後年になって確実に問題が生じるとわれわれは考えている」と話す。
ただし、本研究では、骨格筋量とアルコールの摂取量を同時に測定したため、両者が因果関係にあるのかどうかを明らかにすることはできない。それでもWelch氏は、「この研究は、アルコールの大量摂取が骨格筋量に有害な影響を与える可能性があることを示すものだ」と強調する。そして、「加齢に伴う骨格筋量の減少が筋力低下やフレイルにつながり得ることは、すでに明らかにされている。つまりは、中高年期に日常的に多量の飲酒を避けるべき新たな理由がまた増えたということだ」と付け加えている。
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