関節リウマチに対する新たな治療薬、臨床試験で有望な結果
開発中の薬剤であるperesolimab(ペレソリマブ)が、関節リウマチ(RA)の一部の患者の免疫システムの異常をリセットする可能性を示した第2相臨床試験の結果が報告された。米イーライリリー社のAjay Nirula氏らによる研究で、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に5月18日掲載された。
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RAは、体が自身の関節や組織を誤って攻撃する自己免疫疾患で、関節に痛みやこわばり、疲労などが生じる。モノクローナル抗体であるperesolimabは、免疫細胞(T細胞)の表面に発現し、T細胞の活性化を抑制する働きがあるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)を刺激する。Nirula氏は、「RAのような自己免疫疾患は、免疫系のブレーキが正常に働かないことが原因である可能性がある」と説明する。peresolimabはPD-1を刺激することで、免疫系の正常な制御機構を取り戻すことを意図したものだという。
試験では、従来型の合成疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)または生物学的DMARDによる治療への反応が不十分か反応しなくなった、または許容できない副作用が生じた中等度から重度の成人RA患者98人が対象とされた。対象者は、peresolimab 700mg(49人)、peresolimab 300mg(25人)、またはプラセボ(24人)を4週間に1回、静脈内投与された。主要評価項目は、28カ所の関節の疾患活動性の評価指標であるDAS28-CRPスコアの試験開始時から12週間後までの変化量とした。DAS28-CRPスコアは0点から9.4点までの範囲で、スコアが高いほど疾患の重症度が高いことを示す。
その結果、試験開始時から12週間後のDAS28-CRPスコアの変化量は、700mg投与群でプラセボ投与群よりも有意に大きいことが明らかになった(変化の差−1.09、95%信頼区間−1.73〜−0.46、P<0.001)。安全性については、両群で同様であった。
Nirula氏は、「われわれは、peresolimabの有効性が興味深いレベルであることを確認した」と述べる。同氏によると、過去には、RAの症状緩和にはステロイドが用いられていた。しかし、長期間のステロイド使用は毒性を伴うため、別のタイプの薬剤で免疫系を抑制できないかが検討されてきた。こうした状況の中で登場したのが、炎症カスケードを促進する役割を果たす特定のタンパク質を標的とする腫瘍壊死因子(TNF)α阻害薬などの生物学的製剤である。
一方、peresolimabが標的とするPD-1は、現在、いくつかのがん免疫療法でも標的とされているが、がんの場合には、この経路を刺激するのではなく、遮断することが目標である。Nirula氏は、「より長期間の研究により、peresolimabがRA患者のがんリスクを高めるかどうかを確認する必要がある」と述べている。
Peresolimabの実用化にこぎつけるには、さらなる研究で有効性と新たな安全性の問題が生じないことを確認する必要があるため、まだ数年はかかる見込みだ。今回の第2相試験の最終結果は来年に判明する予定であり、結果が良好であれば、第3相試験が実施される可能性があるが、試験完了には2〜3年を要する。
本研究論文の付随論評の共著者である、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のEllen Gravallese氏は、「peresolimabは、PD-1を刺激して免疫系をリセットし、自分の関節や骨を攻撃しないようにする薬剤であり、医師がRAの治療のためにこれまで使ってきた薬剤とは異なる作用を持つ」と話す。同氏は、RAやその他の自己免疫疾患患者が生物学的製剤や他の免疫抑制剤の使用を中止すると、多くの場合、症状が再発することを指摘し、「peresolimabで免疫系をリセットできれば、永久に薬を飲まずに済む可能性がある」と期待を示す。その一方で同氏は、「確かな結論を出すには、さらなる研究が必要」と述べ、特に、peresolimabの使用に伴いがんが発症する可能性について懸念を示している。
▼外部リンク
・A Phase 2 Trial of Peresolimab for Adults with Rheumatoid Arthritis
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