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糖尿病網膜症検査、「内科から眼科への紹介」に課題がある可能性-NCGMほか

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2023年05月29日 AM10:50

糖尿病患者の眼底検査の年間実施、2015年度は47%

(NCGM)は5月26日、「匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース」()を用いて、2017年度に糖尿病薬の定期処方を受けている外来患者の眼科受診割合と眼底検査の実施割合を算出し、糖尿病網膜症のスクリーニング実施のプロセスのうち具体的にどこに課題があるか分析を行い、その結果を発表した。この研究は、同センター研究所糖尿病情報センターの井花庸子医師、杉山雄大室長、東京大学大学院医学系研究科代謝・栄養病態学の山内敏正教授、虎の門病院の門脇孝院長らのグループによるもの。研究成果は、「Journal of Diabetes Investigation」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

糖尿病はインスリンの作用不足により慢性的な高血糖が持続する疾患であり、糖尿病網膜症や腎症、神経障害など糖尿病に特有の合併症を引き起こす。糖尿病薬や網膜症治療の進歩により糖尿病網膜症による失明は減少しているものの、視力低下による障害者手帳の発行に至る原因疾患の第3位であり、早期発見によって重症化を防ぐことは大変重要だ。糖尿病治療ガイド等では年に1回の眼底スクリーニング検査を推奨しているが、2015年度に実施した研究グループの調査では、年間眼底検査実施割合は47%と半数に至らず、糖尿病診療における課題と考えられていた。実際に、2023年3月末に発出された厚生労働省医政局地域医療計画課長通知において、第8次医療計画の「糖尿病の医療体制構築に係る現状把握のための指標例」として「眼底検査の実施割合」が含まれている。

2017年度に糖尿病処方を受けた患者の眼科受診47.4%、うち眼底検査96.9%

今回の分析では、厚生労働省より、高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて提供された、「匿名レセプト情報・匿名特定検診等情報データベース(NDB)」を使用した。これは、電子化レセプトのほぼ全てを含む大規模データベースであり、全国の保険診療情報をもとに眼科受診と眼底検査のプロセスをより詳細に調べ、改善につながるアプローチを探索している。

研究の結果、約441万人の当該患者において、2017年度に眼科受診があったのは47.4%(都道府県別範囲:38.5%–51.0%)、そのうち眼底検査を実施したのは96.9%(都道府県別範囲:92.1%–98.7%)だった。性別・年齢・インスリン使用・糖尿病認定教育施設の有無・病床数で調整した多変量解析では、女性・高齢者・インスリン使用者、および糖尿病認定教育施設・病床数の多い医療機関で糖尿病薬を処方されている患者での眼底検査実施割合が高いことがわかった。

糖尿病薬を処方している内科と眼科との連携強化が重要

糖尿病網膜症スクリーニングは多くの場合、内科から眼科への受診を進められ、受診した眼科で眼底検査を実施される。今回の結果を受けて、一度でも眼科受診をした患者での眼底実施割合は高値であるものの、そもそも眼科の受診割合が低いことが課題であることがわかった。内科の医師から眼科受診の推奨が適切にできていない可能性のほか、推奨をされても患者が受診していない可能性もある。糖尿病網膜症スクリーニングの実施割合向上として、眼科受診の必要性についての更なる周知や推奨を行い、糖尿病薬を処方している内科と眼科との連携強化が重要であることが明らかになった。

今回の研究結果において考慮すべき点がいくつかある。糖尿病患者を「定期的な糖尿病薬の処方」で定義しているため、食事・運動療法のみで治療を行っている人における実施割合は調べることができていない。また、「保険診療における眼科受診・眼底検査の実施割合」を解析しており、健診における無散瞳カメラや自費診療での眼底検査については今回の解析に含めることはできていない。

「今後も定期的に糖尿病診療の質指標を測定すると共に、診療の質向上につながる具体的な解決策につながりうる分析を行なっていく予定。また、合わせて適切な医療政策の立案に役立つ情報を提供していきたい」と、研究グループは述べている。

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