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HCV排除後の肝がん、寄与する膜貫通型タンパク質遺伝子を同定-金沢大

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2023年05月18日 AM11:34

SVR達成後の肝発がん、なぜ起こるのかは不明

金沢大学は5月15日、(HCV)排除後の肝発がんに寄与する新規遺伝子を発見したと発表した。この研究は、同大学医薬保健研究域保健学系の本多政夫教授、大学院医薬保健学総合研究科医学博士課程の西川昌志医師、岡田光特任准教授、医薬保健研究域医学系の山下太郎教授、医薬保健学総合研究科の金子周一特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

HCVは、全世界で約7100万人が感染しているといわれ、そのうち日本では、約10万人(およそ100人に1人)が感染していると推定されている。HCVの持続感染により慢性肝炎から肝硬変、さらには肝細胞がんへと進展する可能性がある。以前のインターフェロン(IFN)治療ではウイルス学的持続陰性化(Sustained Virological Response:)達成率が40〜50%だったが、現在、直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals:DAAs)内服治療により極めて高いSVR達成率が得られるようになった。SVR達成によりHCVが排除されているため、慢性炎症を抑制することができ、肝発がんを大幅に抑制することができる。近年、SVR状態になっても、肝発がんを起こすケースが増加傾向にある。しかし、HCVが排除された後での肝発がんに至る原因については明らかではなかった。

SVR達成後肝がん症例で脱メチル化される膜貫通タンパク質遺伝子を同定

研究グループは、正常症例、C型慢性肝炎症例、SVR達成後のC型慢性肝炎症例、SVR達成後の肝がん症例から採取した肝臓サンプルを用いて網羅的メチル化アレイ解析を行った。その結果、膜貫通タンパク質No.164遺伝子(TMEM164)が、SVR達成後の肝がん症例において脱メチル化していることを発見した。TMEM164は主に肝の血管内皮細胞、活性化星細胞、一部の毛細血管化した肝類洞内皮細胞で発現していた。TMEM164の発現は、肝線維化進行や肝がん手術症例の無再発生存率や予後と有意に相関していた。

シェアストレスで誘導され、ERストレスシグナル促進

肝類洞内皮細胞株(TMNK1)を用いた検討では、TMEM164はシェアストレスにより誘導され、ERストレスシャペロン分子GRP78/BiPと結合していた。さらにATF6を介したERストレスシグナルを促進することによって、/STAT3シグナルを活性化していた。以上の結果から、TMEM164を「シェアストレス誘導 ER ストレス関連膜タンパク質(Shear stress-induced transmembrane protein associated with ER stress signaling:)」と名付けた。SHERMERノックアウトマウスでは、四塩化炭素負荷による肝線維化が軽減された。TMNK1にSHERMERを過剰発現させた肝腫瘍移植モデルでは、腫瘍の増大が認められた。

新たな発がん機序の解明や診断/治療薬の開発につながると期待

このように今回、C型肝炎ウイルス排除後の肝発がんに寄与する新規遺伝子を同定することに成功した。「本研究により、新たな発がん機序の解明、血管内皮を標的にした診断薬や治療薬の開発につながることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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