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青少年の身体活動、家庭の所得が低いと活動「低」がコロナ禍で顕著に-神戸大ほか

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2023年05月16日 AM11:17

パンデミックが世帯の所得格差を拡大させ、健康格差を悪化させている可能性

神戸大学は5月15日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前と流行中に行われた健康行動に関する調査のデータを解析し、青少年に推奨される身体活動水準の達成状況において社会経済格差の拡大傾向を、朝食摂取状況に格差縮小傾向が認められることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、京都大学大学院医学研究科社会疫学分野の喜屋武享特定助教(研究当時、神戸大学大学院人間発達環境学研究科)、琉球大学医学部保健学科疫学・健康教育学分野の高倉実教授によるもの。研究成果は、「Journal of Physical Activity & Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本における健康格差は、これまで欧米諸国と比較して緩やかだったが、近年は状況が悪化し、2013年以降、政府による対策が進められている。欧米諸国では、家庭や近隣の経済状況による健康行動の格差が観察されているが、日本で健康格差が注目され始めたのは比較的最近になってからであるため、その状況はよくわかっていない。

研究グループはこれまでに、コロナ禍の日本人成人における身体活動の社会経済格差を明らかにしている。そこで今回は、思春期の健康行動における社会経済的格差の問題に着目した。COVID-19パンデミック時、思春期の健康行動は世界的に悪化。日本国内の全国調査でも、身体活動量の著しい減少や、スクリーンタイムの増加などの健康行動の悪化が示されている。また、パンデミックは、世帯の所得格差を拡大させ、健康格差を悪化させる可能性が指摘されている。

2019年と2021年に実施された、青少年と保護者が回答した調査データを使用

研究では、COVID-19流行前と流行中の青少年の健康行動、特に身体活動、、朝食摂取、排便回数などの基本的な健康行動における社会経済的格差の傾向を明らかにすることを目的とした。これらの格差を理解することが青少年に必要な支援を行うための介入戦略や政策立案につながることを期待される。

具体的には、公益財団法人笹川スポーツ財団が実施した「2019年・2021年全国子ども・若者スポーツライフ調査」のデータを使用した。この調査では、児童・青少年の放課後や休日の運動・スポーツ参加状況やスポーツ環境を中心に、睡眠時間やメディア利用時間、排便回数などの健康行動についても調査している。データは、各調査年の6月から7月にかけて、青少年と保護者による自記式質問紙調査法によって収集された。調査対象者は、住民基本台帳の人口に基づく地区・都市規模別の層から比例配分された225地点より2段階層化無作為抽出法で抽出された。調査対象は4歳~21歳の3,000人だった。

青少年の健康行動における社会経済的格差の時間推移を解析

分析対象は12歳~18歳で、高校に通っていない18歳は除外した。年齢と学校在籍の包括基準を満たした参加者数は、2019年は1,076人、2021年は1,025人だった。変数が欠損している個人を除外した後、2019年の766人、2021年の725人のデータを分析した。好ましい健康行動の定義は、各種ガイドラインに準じて、毎日の中高強度身体活動(MVPA)が60分以上、スクリーン時間が2時間未満、睡眠が8〜10時間、毎日の朝食摂取、排便回数が3日に1回以上とした。

社会経済状態の指標には等価所得を用いた。格差勾配指標・格差相対指標という、社会経済状態を指す要因(今回の研究の場合、所得)の各カテゴリーにおける人口割合の違いを考慮した指標を用いた点がこの研究の特徴でもある。

「身体活動水準の達成状況」で社会経済格差が拡大、「朝食摂取」で格差縮小

解析の結果、COVID-19流行前と流行中の青少年において、推奨される身体活動水準の達成において社会経済格差が拡大し、朝食摂取状況における格差は縮小していることがわかった。具体的には、2019年には所得による身体活動の実施状況に差が認められなかったにもかかわらず、2021年は等価所得が低い家庭の青少年ほど身体活動の実施割合が低いことが明らかになり、朝食摂取状況では逆の様相が認められた。スクリーン時間については、格差の縮小傾向がみられたが、統計的には有意ではなかった。睡眠時間と排便頻度は2019年および2021年ともに社会経済格差は認められなかった。

青年期の健康行動、継続的なモニタリングが必要

COVID-19蔓延前の身体活動促進施策が、ひろがった社会経済的格差の是正にも貢献するのか、継続してモニタリングする必要がある。今回の研究により社会経済状態による青少年の身体活動実施状況の差が顕にされたことは、このような健康(行動)の継続的モニタリングの重要性を支持する。「政策の方向性を検討する上で一つの参考資料になることが期待される」と、研究グループは述べている。

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