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「漢字の手書き」が文章力発達に独自の貢献を果たす、漢検・文章検の成績を解析-京大

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2023年04月28日 AM11:27

学校教育のデジタル化は文章力の発達にも影響を及ぼすか

京都大学は4月27日、日本漢字能力検定(漢検)と文章読解・作成能力検定(文章検)の両方を受けた中高生の受検データを解析し、漢字の手書き習得が文章力の発達に独自の貢献をすることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学研究科の大塚貞男特定助教、村井俊哉教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Reading and Writing」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

社会のデジタル化が進む中、文字を手書きする頻度は大幅に減少しており、こうした生活習慣・環境の変化は漢字の書字などの読み書き能力に影響を及ぼすことが予測される。研究グループはこれまでに、漢検の大規模な受検データベースを解析し、漢字能力が読字、書字、意味理解の3側面から成ることを明らかにしている。また、2006年と2016年の漢検受検データを比較し、10年間で成人の書字の力だけが特異的に低下していたことを報告している。最近では、学校教育のデジタル化も進められており、それが学齢期の漢字習得に影響した場合、その影響はその後の高度な読み書き能力の発達にも及ぶのではないかということが懸念される。

漢検・文章検の両方受検した719人の中高生の成績を解析

今回の研究では、中高生の漢字能力の3側面と文章読解・作成能力との関係性を調べ、読み書き能力の発達が書字を含む漢字習得にどのように支えられているのかを検討した。2019年10~11月または2020年1~2月の期間に漢検と文章検の両方を受検した合計719人の中高生(平均年齢16.25歳、女子325人、男子394人)の成績データを解析した。

漢字能力については、先行研究に基づき、漢検の成績から読字、書字、意味理解の3側面の得点を算出。それに加えて、文章検の成績から文章読解力と文章作成能力の得点を算出し、漢字と文章という2つの水準の5つの読み書き能力の間の関係性を調べた。解析には、構造方程式モデリングを用いた。

文章作成能力に「書字」が直接影響、「意味理解」は間接的に寄与

解析の結果、「読字」の力が他の2つの漢字能力の基礎にあり、「書字」の力が文章作成能力に直接影響する一方、「意味理解」の力は文章読解力に影響することで間接的に文章作成に寄与するという読み書き発達の二重経路モデルが支持された。これに対立するモデルとして、「漢字の読字と意味理解を十分に習得すれば文章作成のための漢字能力は事足りる」という仮説に基づき、「書字」ではなく「意味理解」から文章作成への直接の影響を想定したモデルを立てたが、これは支持されなかった。このことから、漢字の書字には文章作成能力に対する独自の影響力があり、これを意味理解で代替することはできないことが考えられる。研究グループはこの研究成果について、「読み書き発達の二重経路モデル」として提唱した。

手書きができなくなることが言語・認知能力に広く影響を及ぼす可能性

研究グループが以前に実施した大学生対象調査でも、漢字の書字の力と文章力との特異的な関連性が明らかになっている。これらの研究成果は、早期のデジタルデバイスの利用が子どもの漢字の手書き習得に抑制的な影響を及ぼした場合、その影響が文章力の発達にまで及ぶ可能性を示唆している。学校教育、特に読み書き教育におけるデジタルデバイスの導入については、その目的や適切な利用方法、効果検証の方法などを注意深く議論していく必要があると考えられる。

今後は、対象者に漢字学習をしてもらい、・認知能力やそれらの基盤にある脳神経ネットワークなどにどのような効果を及ぼすのかを検証することが課題になる。「児童、成人、高齢者といったさまざまな年齢層の人たちを対象に、漢字の読字、書字、意味理解のそれぞれの習得に着目した学習の効果を検証することによって、読み書き教育の実践や、漢字の習得に困難を抱える子どもへの支援方法の開発、高齢期の認知機能維持などに役立つ知見が得られることが期待される」と、研究グループは述べている。

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