3番染色体長腕の転座および逆位を伴う急性骨髄性白血病において
東北大学大学院医学系研究科の鈴木未来子講師(ラジオアイソトープセンター)、山本雅之教授(医科学分野・東北メディカル・メガバンク機構 機構長)らの研究グループは4月4日、3番染色体長腕の転座および逆位を伴う急性骨髄性白血病において、予後不良因子となるEVI1遺伝子の発現を活性化させるメカニズムを解明したと発表した。この研究成果は米学術誌「Cancer Cell」オンライン版に現地時間4月3日付で掲載されている。
(画像はプレスリリースより)
3番染色体長腕21(3q21)領域と3番染色体長腕26(3q26)領域との間に起こる転座および逆位は、急性骨髄性白血病における予後不良因子として知られている。転座および逆位を持つ白血病細胞は、3q26領域に存在するEVI1遺伝子が異所性に高発現しており、これが白血病発症の原因となる。
このEVI1遺伝子の異所性高発現には、相手側である3q21領域にあるなんらかのエンハンサーが関与していると考えられていた。しかし、これまでにそのエンハンサーは同定されておらず、またEVI1遺伝子の発現を制御する機構も分かっていなかったという。
予後不良の白血病に対する新たな治療戦略確立を期待
今回の研究では2つの大腸菌人工染色体(BAC)を連結する手法を用いて、ヒト3q21と3q26との間の染色体逆位を再現。また、その遺伝子を持つトランスジェニックマウス系統を新規に樹立し、マウスが白血病を発症することを実証したという。さらに、EVI1遺伝子の活性化および白血病発症に3q21側に存在するGATA2遺伝子のエンハンサーが寄与していることも解明したとしている。
この研究成果はEVI1遺伝子だけでなく、その異所性異常発現を引き起こすGATA2遺伝子エンハンサーも治療標的となりうることを示している。今後研究を進めることで、予後不良の白血病に対する新たな治療戦略の確立が期待される。(紫音 裕)
▼外部リンク
東北大学 プレスリリース
http://www.med.tohoku.ac.jp/uploads/20140404
Cancer Cell : A Remote GATA2 Hematopoietic Enhancer Drives Leukemogenesis in inv(3)(q21;q26) by Activating EVI1 Expression
http://www.cell.com/cancer-cell/abstract/S1535