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ANCA関連血管炎、発症と再燃リスクに関するHLAハプロタイプを明らかに-筑波大

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2023年03月15日 AM11:28

日本人集団のMPO-AAV、再燃リスクに関連するバイオマーカーは見つかっていない

筑波大学は3月10日、日本人の抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)患者を対象に行われた前向きコホート研究から得られたデータを解析し、MPO(myeloperoxidase)-ANCA陽性AAVの発症リスクに関連するHLA-DRB1*09:01-DQA1*03:02-DQB1*03:03ハプロタイプ(同じ染色体上にある複数の遺伝子多型の組み合わせ)が、再燃リスクにも関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学医療系の土屋尚之教授、川﨑綾助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

AAVは、白血球の一種である好中球の細胞質に存在する自己抗原に対する抗体(抗好中球細胞質抗体、ANCA)が検出されることを特徴とする全身性小型血管炎で、急速進行性糸球体腎炎、間質性肺疾患、肺出血などを主な症状とする指定難病である。臨床症状により、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)に分類されるほか、ANCAの種類により、MPO-ANCA陽性群(MPO-AAV)、PR3(proteinase3)-ANCA陽性群(PR3-AAV)に分類される。MPO-AAVには、MPAの大部分と、GPAとEGPAの一部が含まれ、日本人を含む東アジア系集団におけるAAVの大部分を占める。一方、ヨーロッパ系集団ではPR3-AAVが多くを占めており、遺伝的背景の違いが、このような集団差の一因であると考えられている。

研究グループではこれまでに、日本人集団においては、ヒト白血球抗原()class II領域のHLA-DRB1*09:01-DQB1*03:03ハプロタイプがMPO-AAVの発症リスクに、またHLA-DRB1*13:02が発症抵抗性に関連することを報告している。中国人集団については、-DRB1*09:01、DQB1*03:03とハプロタイプを構成するDQA1*03:02が発症リスクに関連することが知られている。AAVは多くの場合、免疫抑制治療により寛解するが、一部の患者では再燃が見られ、臨床上の問題となっている。ヨーロッパ系集団では、GPAやPR3-AAVの発症リスクに関連するHLA-DPB1*04:01が再燃リスクにも関与することが報告されている。日本人集団については、MPO-ANCA陽性MPAにおいて、寛解維持治療中の副腎皮質ステロイド薬の減量スピードや、MPO-ANCAの再出現が再燃リスクに関連することが報告されているが、AAVの再燃リスクに関連するバイオマーカーは、まだ見つかっていない。そこで今回の研究では、日本人集団におけるMPO-AAVを対象に、発症リスクに関連するHLA-class II遺伝子と再燃リスクとの関連を検討した。

発症リスクに関連するDRB1*09:01、DQA1*03:02、DQB1*03:03、いずれも再燃リスクと関連

まず、HLA-DQA1*03:02が日本人集団においてMPO-AAVの発症リスクに関連するか否かを、厚生労働科学研究費難治性疾患等政策研究事業「難治性血管炎に関する調査研究」班(JPVAS)および進行性腎障害に関する調査研究班に参加する施設、東京医科歯科大学、筑波大学による研究プロジェクトに参加した440名のAAV患者と779名の健常対照群を対象に、解析を行った。その結果、日本人集団においても、DQA1*03:02はMPO-AAVの発症リスクに有意に関連することが確認されたが、DRB1*09:01、DQB1*03:03と強い連鎖不平衡にあり、これらのうちのどちらが第一義的な関連アリルであるかは特定できなかった。従って、現時点では、DRB1*09:01-DQA1*03:02-DQB1*03:03ハプロタイプがMPO-AAV発症リスクに関連すると結論付けた。

次に、JPVASおよび進行性腎障害に関する調査研究班により実施された2つの前向きコホート研究に参加した199名のMPO-AAV患者のデータに基づき、寛解後の再燃とHLA-class IIとの関連を解析した。39名(19.6%)の患者で再燃が見られ、DRB1*09:01、DQA1*03:02、DQB1*03:03のいずれも、再燃リスクと関連する傾向が検出された。生存曲線解析においても、これらのアリルを持つ患者では、寛解維持期間が短くなっていた。

DQA1*03:02とDRβ1_13S、再燃リスクのバイオマーカーになり得る

一方、HLA多型をアミノ酸レベルで解析したところ、HLA-DRβ鎖ポジション13(ポリペプチドのN末端から数えて13番目)にセリンを有するアリル(DRβ1_13S)の保有者では、寛解維持期間が延長していた。MPO-AAV発症抵抗性に関連するDRB1*13:02の保有者でも、同様の傾向が見られた。

そこで、再燃リスクに関連するDQA1*03:02と再燃抵抗性に関連するDRβ1_13Sの有無によって患者群を4群に分けて、生存曲線解析を行った。最も再燃リスクが高いDQA1*03:02陽性かつDRβ1_13S陰性群では、最も再燃リスクが低いDQA1*03:02陰性かつDRβ1_13S陽性群と比較して、ハザード比4.02(95%信頼区間1.39-11.6)の統計学的有意差が検出された。以上のことから、DQA1*03:02とDRβ1_13Sが、MPO-AAVの再燃リスクに関するバイオマーカーになり得ることがわかった。

病因的バリアント特定する重要な情報、寛解維持療法の個別化に資すると期待

日本人を含む東アジア系集団におけるMPO-AAV発症に関連する遺伝因子は、HLA-class II以外は明らかになっていない。さらに、これまでに報告したHLA-DRB1*09:01-DQB1*03:03ハプロタイプについても、その分子機構は未解明である。今回、中国人集団において報告されていたDQA1*03:02が、日本人集団においてもMPO-AAV発症リスクに関連することが明らかになり、分子機構に関与する病因的バリアント(発症原因の一つとなり得る遺伝子配列)を特定する上での、重要な情報が得られたと言える。「寛解後の再燃リスクに関連する遺伝子多型の特定は、再燃予防と免疫抑制療法による感染症発症予防の両方のバランスをとらなければならない臨床現場において、寛解維持療法の個別化に資すると期待される」と、研究グループは述べている。

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