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前立腺がんの骨転移、エクソソームによる破骨細胞の分化誘導が関与-東京医科大ほか

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2023年03月10日 AM11:19

骨転移しやすい前立腺がん、がん細胞由来エクソソームが骨の腫瘍微小環境に与える影響は?

東京医科大学は3月8日、前立腺がん細胞から分泌されるエクソソームが骨の腫瘍微小環境に与える機能として、前立腺がん細胞由来のエクソソーム膜上に存在するCDCP1が破骨細胞の分化を誘導していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学総合研究所分子細胞治療研究部門の落谷孝広教授、東京慈恵会医科大学泌尿器科学講座の木村高弘教授、占部文彦助教、国立がん研究センター研究所病態情報学ユニットの山本雄介ユニット長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Extracellular Vesicles」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

エクソソームは、あらゆる細胞が分泌する100nm程の脂質二重膜で囲まれた小胞で、細胞間相互作用に重要な役割を担っていることが知られている。特にがん細胞由来のエクソソームは、がん細胞の周辺の細胞を制御し、がんの進展に関わることが、これまでの多くの報告によって証明されているが、これまでに前立腺がん細胞由来のエクソソームが、骨の腫瘍微小環境に与える影響に関してはあまり報告がなかった。前立腺がんは進行すると骨に転移しやすく、その多くが造骨性の骨転移像を示す。しかしながら実際には、治療法が多様化した近年、特に悪性度の高い進行した前立腺がんでは溶骨性の骨転移像を呈することもあり、破骨細胞との関わりも注目されている。今回の研究では、前立腺がん由来のエクソソームにおける骨微小環境に与える影響の解析を行い、前立腺がんの新たな治療標的の同定を目指した。

エクソソーム膜上のCDCP1が破骨細胞の分化に寄与、バイオマーカーとなる可能性も示す

今回、研究グループは、前立腺がん細胞由来のエクソソームが、破骨細胞前駆細胞をRANKL存在下において破骨細胞の分化を誘導することを見出した。そこで、その責任分子を同定するために、前立腺がん細胞由来のエクソソームと正常前立腺上皮由来のエクソソームとを比較して、前立腺がん細胞由来のエクソソームにおいて有意に発現が高いタンパク質を候補タンパク質として抽出した。さらに、siRNAを用いて候補タンパク質の発現を抑えた前立腺がん細胞からエクソソームを抽出し、スクリーニングを行なったところ、エクソソームの膜上に存在するCDCP1が破骨細胞の分化に寄与することを明らかにした。

また、今回の研究では、前立腺がん細胞由来のエクソソームの骨微小環境における役割を明らかにするとともに、前立腺がん患者の血漿由来のエクソソームにおけるCDCP1の発現を評価したところ、骨転移を有する前立腺がん患者のエクソソームにおいてCDCP1の発現が上昇していることがわかり、バイオマーカーとしての可能性も呈示した。

エクソソームの膜上に存在するタンパク質、抗体を用いる事で直接標的も可能

CDCP1は、これまでに細胞膜上に存在した場合での腫瘍増殖に寄与するメカニズムは報告されていたが、エクソソームの膜上に存在した場合での機能は報告がされていなかった。これまでのエクソソームに関する論文ではマイクロRNAなどのエクソソーム内包された分子に着目した研究が多く、これらを直接的に標的とすることは困難だった。今回の研究では、エクソソームの膜上に存在するタンパク質に着目しており、抗体を用いる事で直接標的とすることができ、従来の治療法とは異なるエクソソーム標的治療という、新たな診断治療法確立への道を拓くことが期待される。「本研究において、過去のデータベースから、骨が主要な転移先であるがん種においてCDCP1の発現が上昇していることもわかっており、前立腺がんのみならずあらゆるがん種においても応用できる可能性も期待される」と、研究グループは述べている。

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