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頸椎変性疾患術後の嚥下障害要因を、前方・後方アプローチそれぞれで検討-東京医歯大

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2023年03月10日 AM10:36

頸椎変性疾患患者対象、手術前後の嚥下動態と嚥下障害の有無で比較検討

東京医科歯科大学は3月9日、頸椎変性疾患の患者を対象に、(前方/後方アプローチ)と嚥下動態および機能の関連を検討した結果を発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授、中川量晴准教授、吉見佳那子特任助教、吉澤彰大学院生、同大学整形外科学分野の大川淳教授、吉井俊貴准教授、平井高志講師、橋本泉智大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Spine Journal」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

頸椎変性疾患は、頸髄などの頸椎の周りにある神経が圧迫されることにより、頸部や四肢に痛み、痺れなどの症状を生じる。頸椎変性疾患の手術は、頸椎の前方または後方からアプローチをし、神経を圧迫している部分を除去または圧迫を緩和するが、手術後に嚥下障害が一定数生じることが知られている。今まで発表されている術後嚥下障害の発生頻度は、前方からアプローチする手術(前方アプローチ)で1.7~60.0%、後方からアプローチする手術(後方アプローチ)で9.4~21.0%と言われ、頻度に偏りがあった。また、嚥下障害を起こすメカニズムについても詳細に報告されていない。今回の研究では、同大整形外科と摂食嚥下リハビリテーション科が連携を取り、頸椎疾患術後の嚥下障害の要因を明らかにすることを目的とした。

研究の対象者は、同大学病院整形外科で頸椎変性疾患に対して、前方アプローチおよび後方アプローチを受けた患者。年齢、性別、原疾患、Functional Oral Intake Scale(FOIS)、手術方法、術野、手術時間、出血量を調査した。また、手術前日、術後2週以内に嚥下造影検査(VF)でDysphagia Severity Scale(DSS)を評価し、とろみ水4mlを嚥下した時の舌骨前方/上方運動量、Upper Esophageal Sphincter(UES)最大開大量、咽頭通過時間、咽頭残留量、嚥下回数、咽頭後壁の最大距離を測定。次いで、各アプローチの術後嚥下障害(誤嚥あり)があった対象者とそれ以外の対象者の2群に分けて比較した。最後に、前方アプローチ術後の嚥下障害のオッズを算出した。

前方/後方アプローチ術後嚥下障害、ともに前方舌骨運動量の制限が関連

解析の結果、41人の前方アプローチ術後のうち、26人(63.4%)が食事形態の調整を要し、12人(29.3%)に誤嚥所見を認めた。一方、44人の後方アプローチ術後のうち、18人(40.9%)が食事形態の調整を要し、4人(9.1%)に誤嚥所見を認めた。嚥下動態の結果は、前方アプローチ術後で前方、上方舌骨運動量、UES開大量、咽頭残留量および嚥下回数が術前と比較して悪化した。一方、後方アプローチ術後は前方舌骨運動量と咽頭残留量のみ悪化した。

前方アプローチ術後嚥下障害、手術部位・時間、出血量が関連

前方アプローチ術後の嚥下障害のオッズは、第3頸椎より上位の術野が有ると14.40、手術中に100ml以上の出血が有ると9.60、200分以上の手術時が8.18、3椎間以上の術野が有ると6.72という結果だった。特に、「上位の術野」が嚥下障害のオッズが高いことから、手術部位が高いほど飲み込みに重要な舌骨運動を司る筋肉および神経との距離が近くなり、舌骨運動が妨げられる可能性が高まると考えられる。

後方アプローチの客観的報告は世界初

今までに頸椎疾患手術後の嚥下障害を報告した多くの研究は、患者主観による評価だった。同研究では、VF検査によって、より正確な嚥下障害発症の割合や程度を報告することが出来たとしている。同様に、後方アプローチの嚥下障害に関して客観的に報告したことは、同研究が世界で初めてだという。前方および後方アプローチともに、嚥下動態に大きく関与する舌骨動態の制限を認め、前方アプローチの嚥下障害では特に第3頸椎より上位の手術野、200分を超える手術時間、100mlを超える出血量が大きく関与した。この知見により、整形外科の術者やそのチームが術後嚥下障害を予測できるようになることが期待される、と研究グループは述べている。

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