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全国調査で20~40代の「性的活動」の実態が明らかに-東大

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2023年02月28日 AM11:22

20~49歳の日本人成人を対象に「性的行動」に関する全国調査をオンラインで実施

東京大学は2月27日、日本における性的活動やその満足度に関し、オンライン調査で実態を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科国際保健政策学分野の坂元晴香特任研究員と上田ピーター客員研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Sex Research」に掲載されている。

性と生殖に関する健康(Sexual and Reproductive Health)の向上は、世界のあらゆる場所と同様に、日本においても公衆衛生上の優先事項である。過去数十年の間に性的行動に影響を与える要因は大きく変化している。例えば、出会い系アプリの登場、ポルノグラフィーが無料でかつ容易に入手可能になったことなどが挙げられる。同時に、多くの国で、成人の性行為の頻度が低下しており、その傾向が新型コロナウイルスの流行によってさらに加速した可能性についても報告されている。

セクシャルヘルスや性的活動に関して全国代表性のある調査を実施することは、性と生殖に関する健康を改善するためにどのような介入方法が良いのか、その設計を行い実際の介入を評価する際の重要な情報となる。また、医療関係者、教育関係者、および一般市民の間で性的活動に対する理解を深める上でも重要な役割を果たす。しかし、日本を含む東アジアでは性的活動に関する報告は少なく、またその報告内容も、異性間の関係性における性的活動を見ているなど限定的だ。

そこで研究グループは今回、20~49歳の日本人成人を対象とし、オンラインで「日本人の性的行動に関する全国調査」を実施。日本人の性的指向、性的活動の実態及びその満足度等について調査した。

バイセクシャル、ホモセクシャル、アセクシャルなど、あらゆる性的指向者を対象に

回答者の属性の内訳を見てみると、女性は既婚者が56.5%、未婚(交際相手ありかつ同棲中)が2.7%、未婚(交際相手あり、同棲なし)が8.7%、未婚(交際相手なし)が32%だった。男性ではそれぞれ50.0%、1.8%、6.7%、41.5%だった。

性的指向に関しては女性の82.9%、男性の87.4%が異性愛者と回答し、20~29歳ではこの比率が最も低かった(女性75.7%、男性80.4%)。女性ではバイセクシャルが5.5%、ホモセクシャルが0.9%、男性ではそれぞれ3.4%、2.0%だった。アセクシャルと答えた人は女性10.0%、男性6.9%で、特に20~29歳で最も多く(女性14.7%、男性11.1%)、年齢とともに減少した。

「これまでの生涯で性交渉相手がいなかった」男性19.8%、女性15.3%

性交渉経験、パートナーの数、性交渉開始年齢については、女性の15.3%がこれまでの生涯で性交渉相手がいなかったと答えており、この割合は20~29歳では29.7%、40~49歳で7.3%だった。男性では、19.8%が生涯での性交渉相手なしと答えており、年齢別割合は43.0%(20~29歳)、7.4%(40~49歳)だった。

これまでの性的パートナー数の中央値は(性産業従事者との性交渉含む)、女性で3、男性で4だった。性交渉開始年齢の中央値は、女性・男性ともに20歳だった。性交渉開始年齢を16歳未満で回答した割合も、女性・男性ともにほぼ同じで、それぞれ8.0%、8.4%だった。

過去1年間に週1回以上の性交渉があったと答えた人は(性産業従事者との性交渉含む)、女性で13.0%、男性で13.2%だった。他方、女性の45.3%、男性の44.5%が、過去1年間に性産業従事者含めて性的パートナーがいなかったと回答した。

「性生活に満足している」男性23.1%、女性27.8%

性生活の満足度については、「満足している」と答えた人の割合は、女性で27.8%、男性で23.1%だった。「満足していると思わない」と答えた人の割合は、女性で17.6%、男性で27.1%だった。

「性交渉の頻度を増やしたい」と回答した人の割合は、女性で26.0%、男性で46.4%だったのに対し、「性交渉の頻度を減らしたい」と回答した人の割合は、女性で13.4%、男性で5.8%だった。

性交渉を「とても大切だ」「やや大切だ」と回答した人の割合は、女性で37.4%、男性で54.2%だった。「あまり重要でない」「全く重要でない」と回答した人の割合は、女性で33.8%、男性で16.1%だった。

「性的産業のサービスを利用したことがある」男性48.3%、女性4.0%

性産業やポルノグラフィーの利用については、これまでにポルノグラフィーを利用したことがあると回答したのは、女性で35.5%、男性で84.1%だった。週3回以上ポルノグラフィーを利用しているという回答は20代で最も多く、女性で6.5%、男性で34.8%だった。

ポルノグラフィーの利用が性生活に悪い影響を与えていると回答した人の割合は、女性で2.6%、男性で4.1%だった。他方、良い影響を与えていると回答したのは、女性で9.6%、男性で19.3%だった。

これまでの生涯で性的産業のサービスを利用したことがあると答えたのは、女性で4.0%、男性で48.3%だった。男性が最もよく利用するサービスは、ソープランド(30.6%)、コールサービス(ファッションヘルス・デリバリーヘルス)(27.1%)、ピンクサロン(19.5%)だった。

欧米などに比べ日本は「性交渉未経験者」が多い、2015~2022年の間に増えた可能性

今回の調査により、性交渉経験のない割合が女性・男性とも非常に多いことが明らかとなった。生涯の性交渉相手がゼロだったと報告した割合は、20~29歳の女性で約30%、男性43%、30~39歳の女性14%、男性17%だった。

研究グループは、2015年に実施された出生動向基本調査の割合を用いて同様の解析を行っているが(30~34歳の女性12%、男性13%、35~39歳の女性9%、男性10%が異性との性交渉経験がないと報告)、その当時よりもさらに性交渉未経験者が増えていることが判明した。両者の調査は調査対象者や質問項目設定等が異なるため単純比較は難しいとしているが、2015~2022年の間に性交渉未経験者が増えた可能性が考えられるという。欧米も日本同様に、性交渉未経験者の割合は年々増加傾向にあるが、その数値は日本と比較すると依然として低い(例:英国では25~34歳の女性の10%、男性の7%で性交渉経験が無いと回答)。

また今回、日本では性的活動が不活発であることも明らかとなった。20~29歳の女性の42%、男性の55%が過去1年間に性的パートナーがいなかったと回答。この割合は他の先進諸国の割合と比較すると突出して高い(例:2016年のドイツの調査で、過去1年間に性交渉経験がないと回答したのは女性・男性ともに約20%前後)。しかし、こうした諸外国の調査はその大半が新型コロナウイルス流行前に実施された調査であることには留意が必要だ。

「無性愛者」と回答した割合も諸外国と比較して圧倒的に高い

さらに、20~29歳の女性(15%)、男性(11%)が、自分は「無性愛者」であると回答している。この数字は、年齢とともに減少するが、諸外国と比較すると圧倒的に高い(英国・スウェーデンともに1%未満と報告)という。

また、性交渉を重視していない人の割合や性生活への満足度も諸外国と比較して高いことが明らかとなった。各国で用いられている調査様式が異なることや根本的に性交渉やセクシャルヘルスに関する文化・価値観が大きく異なるため単純比較は難しいが、日本は性的活動が低調であり、またその満足度も低いことが明らかになった。他方、日本では性産業の利用が、諸外国と比較して圧倒的に高いことも明らかとなった。

「性産業」の利用経験者も欧米と比較して多い

さらに、女性の4%、男性の48%がこれまでの生涯で性産業を利用したことがあると回答。スウェーデンでは、生涯で性産業に対して金銭等の報酬を提供したことがある割合は16~84歳の男性で約10%、女性では1%未満に留まっている。英国でも過去5年間の間に性交渉のためにお金を支払ったことがあると報告した男性の割合は、年齢層を超えて3~5%の範囲、女性ではほぼゼロだった。

梅毒の増加など、性交渉に起因する社会問題の基盤となる日本の性交渉の実態を提供

全国規模での性交渉の実態に関する調査は同調査が初であり、また、異性間に限らずあらゆる性的指向を有する人を対象に加えた調査研究も今回が初となる。

研究グループは「少子化や梅毒等性感染症の増加が指摘される中、その根底にある成人男女の性交渉の実態を明らかにすることは、さまざまなセクシャルヘルスに関する課題解決につながるものだ」と、述べている。

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