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在宅医療における在宅療養支援診療所・病院が果たす効果を解析、NDBから-筑波大ほか

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2023年02月21日 AM10:44

一般診療所/在支診・在支病/機能強化型在支診・在支病を比較

筑波大学は2月17日、利用する医療機関の種類によって65歳以上の高齢者が受ける在宅医療サービス(、在宅看取り)がどの程度異なるのかを全国の医療レセプトデータを用いて調査し、在宅療養支援診療所・病院(特に機能強化型)は一般診療所と比べて、在宅医療で期待される役割をより果たしていることが示されたことを発表した。この研究は、同大医学医療系/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Geriatrics Society」に掲載されている。

「高齢化の進展」や「地域医療構想による病床の機能分化・連携」に伴い、日本の在宅医療の需要は増大している。これに伴い、在宅医療における患者の急変時の対応や看取りが一層重要になっている。こうした背景の下、在宅医療における医療機能向上を図るために創設されたのが、24時間の往診や連絡体制が必須である在宅療養支援診療所・病院(以下、在支診・在支病)である。2012年には、緊急時の往診や在宅看取りをさらに推進するため、機能強化型在支診・在支病も創設された。

先行研究では、在支診・在支病を利用する患者では一般診療所を利用する患者と比べ再入院が少ないこと、病床がある機能強化型在支診・在支病の在宅看取りが多いことが報告されている。しかし、全国レベルで一般診療所、従来型在支診・在支病、機能強化型在支診・在支病の3種類の医療機関を直接比較した研究は、これまで存在していない。そこで研究グループは、後ろ向きコホート研究として、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用い、実社会で3種類の医療機関が果たしている医療機能の違いを比較した。

2014年7月~2015年9月の新規訪問診療利用の高齢者約16万人が対象

対象は、2014年7月~2015年9月の間に新たに訪問診療を開始し、施設ではなく自宅に居住していた65歳以上。説明変数は訪問診療を受けた医療機関種別(「一般診療所」「従来型在支診・在支病」「機能強化型在支診・在支病」)とし、アウトカムは訪問診療開始から6か月間(6か月以内に終了した場合は訪問診療終了の翌月まで)の「往診」(追跡期間中に1回以上の有無)、「入院」(追跡期間中に1回以上の有無)、「」(追跡期間中に死亡した人を対象に在宅看取りの有無を判別し、在宅での死亡だった場合は死亡時の医師の立ち合いの有無)について評価した。交絡因子を調整した上で、それぞれ多変量ロジスティック回帰分析を行った。

解析対象は、一般診療所:1万3,477人、従来型在支診・在支病:6万4,616人、機能強化型在支診・在支病:8万2,581人を含む16万674人となった。

在支診・在支病の利用者は、往診「多」、入院「少」、医師の立ち合いを伴った在宅看取り「多」

「追跡期間中に1回以上の往診」の調整後オッズ比[95%信頼区間]は、一般診療所と比べ、従来型在支診・在支病:1.62[1.56‒1.69]、機能強化型在支診・在支病:1.86[1.79‒1.93]と有意に多くなった。一方、「1回以上の入院」の調整後オッズ比[95%信頼区間]は、従来型在支診・在支病:0.86[0.82‒0.90]、機能強化型在支診・在支病:0.88[0.84‒0.92]と有意に少ない結果を示した。

追跡期間中に死亡した3万9,082人(一般診療所:2,483人、従来型在支診・在支病:1万4,494人、機能強化型在支診・在支病:2万2,105人)における「在宅看取り」の調整後オッズ比[95%信頼区間]は、一般診療所と比べ、従来型在支診・在支病:1.46[1.33‒1.59]、機能強化型在支診・在支病:1.60[1.46‒1.74]だった。また、在宅死をした患者における「医師の立ち合い有り」の調整後オッズ比[95%信頼区間]は、一般診療所と比べ、それぞれ4.81[4.22‒5.48]、10.55[9.19‒12.11]だった。

これらの結果から、一般診療所と比較して在支診・在支病を利用する患者は、「往診が多く」「入院は少なく」「医師の立ち合いを伴った在宅看取りが多い」ことが示された。その中でも特に、機能強化型在支診・在支病は往診や在宅看取りをより多く提供していることが明らかになった。

在宅療養支援診療所・病院の拡大に期待

今回の研究により、在支診・在支病(特に機能強化型在支診・在支病)は一般診療所よりも在宅医療で期待される役割を果たしていることが、全国規模のレセプトを用いて裏付けられた。患者の容体急変時に往診で自宅治療を行い、入院を回避することができれば、入院に伴う認知機能や身体機能の悪化を防げ、医療費の抑制にもつながる。日本人の半数以上が自宅での看取りを希望している一方で、在宅死は死亡全体の約13%にとどまっている。「この差を埋めるためにも、在支診・在支病(特に機能強化型在支診・在支病)の拡大を今後、さらに推進していく取り組みが望まれる」と、研究グループは述べている。

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