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在日外国人の新型コロナワクチンの接種状況・意向・心理的要因を調査-東北大ほか

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2023年02月10日 AM11:39

外国人住民は現地住民よりワクチン接種率が低いと欧米の報告、日本の状況は?

東北大学は2月9日、日本で暮らす海外生まれ・日本生まれの外国籍住民()1,986人および日本人1,704人を対象に新型コロナワクチンの接種状況・意向を調査し、それぞれの心理的要因を比較した結果、外国籍住民のワクチン接種意向は低くないが、接種率は低かったことがわかったと発表した。この研究は、同大東北アジア研究センターの滕媛媛助教、同大大学院環境科学研究科の中谷友樹教授、埴淵知哉准教授、東京医科大学の町田征己講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Vaccine」オンライン速報版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

欧米では新型コロナウィルス感染症の流行において、外国人住民または民族的少数派が大きな影響(例えば、より高い感染率や死亡率)を及ぼしているにもかかわらず、現地住民よりもワクチン接種率が低いとの報告が相次いでいる。しかし日本では外国人住民における新型コロナワクチン接種の状況や意向およびそれらを規定する心理的要因は不明だった。

そこで研究グループは、広く使われている最新の7Cモデルを用いて独自の調査を実施。海外生まれの外国籍住民、日本生まれの外国籍住民、日本人の間における新型コロナワクチンの接種状況や意向、およびそれぞれの心理的規定要因との関連の違いについて、日本で初めて検討した。

調査は2021年10月、20歳以上の外国籍住民1,986人が対象

調査は、日本に居住する20歳以上の外国籍住民(有効回答:1,986人、うち日本生まれ501人)と日本国籍住民(有効回答:1,704人)に対し、2021年10月にオンラインで実施。分析では「ワクチンを接種した」「接種する予定がある」場合を「接種意向あり」とした。また、心理的要因を測るため、ワクチン接種意向を構成する7つの要素(信頼、無頓着、障壁、打算、集団責任、社会規範の支持、陰謀論的思考)を挙げる7Cモデルによる予防接種レディネス尺度のshort版を利用した。なお7つの要素と新型コロナワクチンの接種意向との関連性を調べるため、ロバスト標準誤差を用いたポアソン回帰分析を用いた。

日本生まれ外国籍は接種率最低、在日外国人第二世代の社会経済的に不利な状況が影響か

その結果、外国籍住民における新型コロナワクチンの接種意向は、日本生まれの外国籍住民(82%)は日本人(84.7%)とほぼ同じ、海外生まれの外国籍住民(88.4%)ではそれ以上に高かったことがわかった。一方、外国籍住民における新型コロナワクチンを2回接種した者の割合は比較的低く、70.6%に対し、海外生まれの外国籍住民は66.3%、日本生まれの外国籍住民は57.3%だった。在日外国人第二世代の教育達成状況や社会統合の程度が比較的低いことはしばしば指摘されており、こうした社会経済的に不利な状況がワクチン接種の遅れをもたらしていると考えられた。

「信頼・無頓着・障壁」に焦点を当てた接種促進策は日本人/在日外国人いずれにも有効と示唆

ワクチン接種意向に関する回帰分析の結果、7Cモデルにおける「打算(ワクチン接種の個人的なコストとベネフィットの重み付けの度合い)」以外のすべての構成要素は、新型コロナワクチンの接種意向に関連していた。また、ワクチン接種をためらう代表的な3つの影響要因である「信頼(予防接種の安全性と有効性、保健所、ワクチンを推奨・開発する保健当局への信頼)」「無頓着(感染症のリスクが低いと認識しているため、予防接種を受けようとしない無頓着な態度)」「障壁(ワクチン接種を困難または費用がかかるものとする日常生活における構造的または心理的なハードル)」の効果がどのグループにおいても強かった。これらのことから、この3つの要素に焦点を当てるワクチン接種の促進策は、日本人に対しても在日外国人に対しても有効であると考えられる。

接種意向の心理的要因、日本生まれの外国籍住民と日本人は比較的似た傾向

ただしグループによって各要素による接種意向の発生率比は異なっていた。日本生まれの外国籍住民における接種意向の心理的要因は、海外生まれの外国籍住民よりも、日本人の場合に類似していた。具体的には、日本生まれの外国籍住民と日本人住民の間で効果が異なる要因は「陰謀論的思考(ワクチン接種に関する陰謀論的思考とフェイクニュースへの確信)」のみだった。「陰謀論的思考」は、外国籍住民よりも、日本人の接種意向とより強く関連することがわかった。

また、有意な関連性が確認された要素の中で、海外生まれの外国籍住民と日本生まれの外国籍住民の間における効果に有意差がない要素は、「社会規範の支持(ワクチンを接種していない人を社会的に監視し、罰則を加えることへの支持)」のみだった。外国籍住民の母国における社会規範などは、ソーシャルメディアや家族・友人を通じて外国籍住民に伝わり、そのワクチン接種意向に影響を与えた可能性がある。

海外生まれの外国籍住民は「集団責任」意識と接種意向の関連が弱い

さらに、海外生まれの外国籍住民は高い「集団責任(他人を守り、感染症をなくそうとする意志)」意識を示していた。しかし「集団責任」は、海外生まれの外国籍住民よりも、社会的つながりが比較的多いと思われる日本生まれの外国籍住民と日本人の接種意向により強い影響を与えることがわかった。この結果は外国籍住民の日本社会での社会ネットワークを拡大させることで、集団責任と接種意向との関連性を高め、ワクチン接種意向を高められる可能性を示唆している。

外国籍住民に対してカスタマイズされたワクチン接種促進策の重要性を示唆

今回の研究による知見は、在日外国人住民へのワクチン接種促進をめぐって、心理的およびそれを形作る文化的な違いに配慮した政策の重要性を示唆している。「日本における外国籍住民と日本人の新型コロナワクチンの接種状況や意向およびその影響要因の違いを調べた初めての研究であり、日本社会やアジアの文脈における外国人住民の健康の理解に大きく貢献するものだ」と、研究グループは述べている。

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