加熱式たばこのCOVID-19への影響はほとんど検討されていなかった
大阪公立大学は2月3日、加熱式たばこの使用と新型コロナウイルス感染の関係に着目し、調査を実施したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科呼吸器内科学の浅井一久准教授、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部の田淵貴大部長補佐らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。
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加熱式たばこは、タバコ葉を燃焼させず、加熱して発生させた蒸気を吸入するたばこ製品で、電子たばこまたは新型たばことも呼ばれている。日本たばこ協会の2021年データでは、日本における加熱式たばこの市場占有率は約3分の1と推計されており、加熱式たばこは燃焼式たばこ(通常の紙巻きたばこ)よりもニコチンやタールといった有害物質への曝露が少ないとされているが、発売後時間が経過しておらず、呼吸器系への影響や発がん性等の長期的な影響については明らかになっていない。
昨今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に大流行する中、燃焼式たばこの使用は一般的には人工呼吸器の使用や死亡を含むCOVID-19の重症化リスク因子と考えられ、日本の「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」でも喫煙が「重症化のリスク因子」の項目に記載されている。COVID-19流行下において、国からの呼びかけや行動制限の影響によって各国でたばこ使用行動の変化が見られているが、加熱式たばこの使用はむしろ増加しているとの報告がある。しかし、燃焼式たばこに関するデータが蓄積されているのに対し、加熱式たばこの使用者がCOVID-19に罹患した場合にどのような影響があるのかについては、これまでほとんど検討がなされていなかった。
感染リスク・罹患時の酸素投与リスクとも、「たばこ非使用者<加熱式たばこ使用者」
今回の研究では、加熱式たばこを含むたばこの使用状況と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染およびCOVID-19罹患時の悪化との関係について調べることを目的とした。インターネット調査会社に登録中の日本の一般住民から日本の人口分布に沿ってランダムに選定された参加者を対象に、2022年2月にオンラインで生活状況調査が行われた(JASTIS 2022 研究)。このデータのうち、加熱式たばこを含むたばこ使用状況と2020年・2021年のSARS-CoV-2感染および感染時の悪化(入院、酸素投与)の有無、さらに先行研究を踏まえ感染および悪化と関連しうる項目を抽出し、その関係性について統計解析を行った。
研究参加者3万130名(16〜81歳)のうち、24.3%が現在たばこを使用し、使用者のうち21.2%が加熱式たばこを単独、30.1%が燃焼式たばことの併用で使用していた。全参加者における解析で、たばこ非使用者と比較し、加熱式たばこ使用者(燃焼式たばことの併用者を含む)ではSARS-CoV-2感染リスクが高いという結果だった。また、SARS-CoV-2感染者で2年とも感染した20名を除く1,097名における解析で、たばこ非使用者と比較し、過去の使用者を含むいずれのたばこ使用者もCOVID-19罹患時に酸素投与を必要とするリスクが高いという結果だった。燃焼式たばこと加熱式たばこの併用者は、SARS-CoV-2の感染およびCOVID-19罹患時の入院、酸素投与のいずれのオッズ比も最も高い値を示した。
加熱式たばこがどういったメカニズムで関与するのか、今後さらなる研究が必要
今回の研究は、加熱式たばこを含むたばこ使用とSARS-CoV-2感染およびCOVID-19罹患時の悪化リスクについて検討したものである。この結果により、燃焼式たばこのCOVID-19悪化に対するリスクが再確認され、また、新たに加熱式たばこの使用(特に燃焼式たばことの併用)がCOVID-19悪化に関連する可能性が示唆された。しかしながら、今回の研究はあくまで一時点を見たもので、現在加熱式たばこを単独で使用している人も過去に燃焼式たばこを使用していることがほとんどである(今回は加熱式たばこ単独使用者の86%が該当)。「加熱式たばこの使用が実際どういったメカニズムでCOVID-19罹患・悪化に関与するのかについては今後さらなる研究が必要であるが、本研究の結果がCOVID-19流行下におけるたばこ使用行動を考えるきっかけの一つ、また、新型たばこの影響に関する研究の一助となると考えている」と、研究グループは述べている。
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・大阪公立大学 プレスリリース