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HTLV-1感染者へのVEGF阻害薬の眼内投与、in vitroで安全性を確認-東京医歯大

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2023年01月31日 AM10:21

HTLV-1感染者に対する「」の安全性は検証されていなかった

東京医科歯科大学は1月30日、)の変動によって眼内環境の悪化が懸念されるHTLV-1感染者において、VEGF阻害薬の眼内投与(抗VEGF治療)の安全性をin vitroで初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科 眼科学分野の鴨居功樹講師、大野京子教授、宗源大学院生、輕部央子非常勤医師、張晶大学院生、楊明明大学院生の研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Immunology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

HTLV-1は世界保険機関(WHO)からTechnical Reportが出版されるなど、全世界で取り組むべき重要な感染症と位置付けられている。HTLV-1感染者は世界で3000万人以上、日本で100万人前後存在する。HTLV-1は、成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、HTLV-1ぶどう膜炎()など、ヒトに疾患を引き起こす。特に、HTLV-1が引き起こす眼の炎症であるHUは、ATLに次いで頻度の高い関連疾患で、視力低下を引き起こす。また、HTLV-1感染者の多くが潜伏感染者(キャリア)で、無症状のため関連疾患を発症した際の検査によって初めて感染が判明することが多く、それまで感染が把握できていないという現実もある。

VEGFは、血管新生と血管透過性の促進作用のある分子として知られている。眼疾患において、VEGFが深く関与する加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、近視に伴う脈絡膜新生血管などの眼疾患は、失明原因の上位に挙げられ、世界で2億人を超える患者が存在する。抗VEGF治療はこれらの眼疾患に有効で、世界で多くの患者に行われている。

一方で、VEGFはHTLV-1が細胞に感染することを妨げる働きがあることが知られている。VEGF阻害薬の眼内投与はVEGFの変動を引き起こすため、HTLV-1感染者の眼内環境を悪化させることが考えられる。特に、血液眼関門(血液と眼のバリア)が破綻した状態にある上記の眼疾患は、眼内でHTLV-1感染細胞が暴露されやすいため、VEGF阻害薬の投与によってHTLV-1が原因のHUが引き起こされるリスクが高まると想定される。しかし、これまでHTLV-1感染者における抗VEGF治療の安全性の検証はされていなかった。

HTLV-1感染者へのVEGF阻害薬眼内投与によるHU惹起リスク「低」、ATL患者では要注意

そこで研究グループは今回、血液眼関門を構成する眼細胞である網膜色素上皮細胞とHTLV-1感染細胞を用いて、HTLV-1感染者の眼内環境を模した実験系を構築し、VEGF阻害薬の眼内投与の安全性を検討した。

その結果、HTLV-1感染者の眼内環境へのVEGF阻害薬投与によって炎症性サイトカイン・ケモカイン産生の上昇は見られず、また、感染細胞と網膜色素上皮におけるHTLV-1プロウイルスロード(PVL)、細胞増殖能、NF-κB活性にも影響を与えなかった。同様に、ATL(HTLV-1感染細胞が、がん化して生じる白血病)患者の眼内環境の実験系でVEGF阻害薬の影響を調べたところ、ケモカイン、PVL、細胞増殖能、NF-κB活性に影響を与えなかったが、炎症性サイトカインIL-6のみ上昇が見られたという。

以上より、HTLV-1感染者におけるVEGF阻害薬の眼内投与は、HTLV-1が原因のHUが引き起こされるリスクが低いことが判明し、安全に投与できることが示唆された。一方で、ATL患者においては一定の注意を要する可能性も示唆された。

HTLV-1感染者へのVEGF阻害薬眼内投与の安全性を提示

抗VEGF治療は、、糖尿病網膜症、近視性脈絡膜新生血管など、多くの患者に有効な治療法だ。「HTLV-1感染者におけるVEGF阻害薬の眼内投与は、HTLV-1が原因の眼炎症を引き起こすリスクが危惧されていたが、本研究でHTLV-1感染者におけるVEGF阻害薬の眼内投与の安全性を示したことは、抗VEGF治療を受けるHTLV-1感染患者や治療に携わる医療関係者にとって、有益な情報提供となると考える」と、研究グループは述べている。

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