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ファンコニ貧血児に「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」実施、日本初-成育医療センター

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2023年01月23日 AM11:06

少子化でHLA合致ドナーが見つかりにくく、ハプロ移植の安全性向上が求められる

国立成育医療研究センターは1月19日、HLAの合致するドナーがいないファンコニ貧血の男児に対し、父親(HLAが半分合致)をドナーとした「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」を実施し、大きな合併症なく経過して、無事退院することができたことを発表した。この移植は、同センター小児がんセンターの井口晶裕氏、藤森健太郎氏、牛腸義宏氏、坂口大俊氏、富澤大輔氏、出口隆生診氏、松本公一氏、遺伝子細胞治療推進センターの内山徹氏、小野寺雅史氏らのグループによるものだ。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ハプロ移植は、HLAが半分合致するドナーからの移植で、一般的には移植片対宿主病(GVHD)や生着不全の危険性が高い移植だ。ハプロ移植ではHLAの不一致とそれに伴う合併症に対応するため、移植後に抗がん剤であるシクロフォスファミドを大量に使用したり、強い免疫抑制療法で制御したりしてきた。しかし、移植前処置の抗がん剤や放射線治療に加えて、移植後に大量のシクロフォスファミドを投与することは、治療関連毒性や晩期合併症のリスクが増加する問題がある。また、移植後に行う強度の免疫抑制療法は感染症の危険が高くなること、腎障害や微小血管障害など免疫抑制剤自体の副作用という問題もある。さらに、少子化でHLAが合致するドナーを見つけにくくなっている現状もあり、ハプロ移植の安全性を向上させることが求められている。

ファンコニ貧血は大量に抗がん剤投与できないため、ハプロ移植後の合併症リスクが高い

ファンコニ貧血は、生まれつきDNA修復障害のある病気で、加齢とともに造血障害が進行する。病状がさらに進行すると白血病を発症する危険性や、思春期以降は固形がんを発症する危険性も次第に高くなる。年間の発症数は5~10人前後で難病に指定されている。造血障害が進行している患者には、造血幹細胞移植を行う。

ファンコニ貧血はDNA修復障害のため重大な臓器障害を引き起こす危険性が高く、大量の抗がん剤(特にシクロフォスファミドなどのアルキル化剤)や放射線治療ができない。また、ファンコニ貧血では移植後の重症GVHD発症は、将来の固形がん発症の危険性をさらに高めてしまうことも知られている。そのため、これまで日本でファンコニ貧血の患者にハプロ移植を行う場合には、免疫抑制療法を強化した移植とせざるをえず、感染症やGVHDなどの移植合併症の危険が高い移植となっていた。

GVHDを起こすαβT細胞・リンパ増殖性疾患につながるB細胞を除去してハプロ移植

今回の移植に用いた「αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植」は、HLAが半分合致するドナーの造血幹細胞から、GVHDを引き起こすαβT細胞を除去して移植するため、抗がん剤である移植後大量シクロフォスファミドは不要となり、治療関連毒性や晩期合併症を軽減することができる。また移植後の免疫抑制療法も、最小限で済ませることができる。移植細胞からαβT細胞は除去されるがγδT細胞は残存した状態で移植するため、残存するγδT細胞が感染症に働き、また抗腫瘍効果も保持できるとされている。B細胞の除去は、移植後のリンパ増殖性疾患の発症を抑制する目的がある。

移植後およそ2か月で退院、免疫抑制剤を使用せずGVHD発症なく経過

今回移植を受けた男児は、大きな合併症はなく順調に経過し、移植後およそ2か月で無事退院。現在は、100%ドナー型の造血となっており、免疫抑制剤は使用していないがGVHDの発症はなく経過しているという。また、αβT細胞&B細胞除去ハプロ移植は、欧州では小児を中心に実臨床で行われているが、日本ではほとんど行われておらず、今回の治療はファンコニ貧血に対する日本で初めての移植成功例となる。

今回の移植について、担当医師らは次のように述べている。「ハプロ移植において、αβT細胞&B細胞除去を用いた造血細胞移植は、少子化によるドナーソースの減少に対応しているばかりでなく、移植合併症の大幅な軽減につながると期待される。ファンコニ貧血の患者や小児患者だけでなく、成人を含めた造血幹細胞移植の有力な移植方法のひとつとして普及が望まれる治療法と考えられる。今後、同センター小児がんセンターでは、本移植法の治療開発を進め、将来本治療法が保険収載されることを目指す」。

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