気温上昇と脳卒中搬送との関連は?岡山市65歳以上の救急搬送データ+気象庁データより
岡山大学は12月22日、岡山市の救急搬送データと気象庁のデータを用いて、気温上昇と脳卒中搬送との関連を調べた結果を発表した。この研究は、同大岡大学院医歯薬学総合研究科(医)の藤本竜平院生(津山中央病院循環器内科医長)、鈴木越治研究准教授、中村一文准教授、伊藤浩教授、頼藤貴志教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Society of Cardiology Asia」で発表された。
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近年の気候変動と地球温暖化は国際的に重大な問題であり、世界中で異常気象が発生し、各国が健康を守るための気候変動対策を策定している。東アジアは梅雨明け後に太平洋高気圧の影響により、連日の猛暑日が記録され、脳卒中をはじめとする脳血管疾患や心血管疾患などへの影響が懸念される。脳卒中は依然、死因の上位を占めているが、東アジア特有の梅雨明け後の異常な暑さが脳卒中に与える影響については、十分に知られていない。
研究グループは、岡山市救急課から2012~2019年までの梅雨入りから梅雨明け3か月までの間に脳卒中で救急搬送された65歳以上の高齢者3,367人の救急搬送データを取得。また、気象庁岡山市気象台から、外気温、相対湿度、気圧を、岡山市環境保全課が管理する岡山市内観測所から、PM2.5の平均大気中濃度のデータを1時間ごとに取得した。これらのデータをもとに、梅雨明け1か月後、2か月後、3か月後でそれぞれ評価した。
梅雨以外の期間と比較、梅雨明け1か月後の脳卒中搬送リスク31%上昇
研究の結果、気温と脳卒中の関連は梅雨明け1か月後に、最も高くなることがわかった。結果に影響を与えうる時間ごとの相対湿度、気圧、PM2.5濃度を調整したところ全体の脳卒中搬送リスクは35%高くなった(調整オッズ比1.35, 95%信頼区間1.28, 1.43)。脳卒中の種類別では出血性が24%、虚血性(主に脳梗塞)が36%、一過性脳虚血発作が56%上昇することが示された。
さらに、暑い気温にさらされることと脳卒中搬送との関連が、梅雨時および梅雨明けによって異なる可能性を評価するために、梅雨以外の期間と比較した。その結果、梅雨明け1か月後の脳卒中搬送リスクが31%上昇していた。
以上のことから、研究グループは、「高齢者が暑い気候にさらされると、脳卒中にかかりやすいと考えられる」とし、梅雨明け後の猛暑日の増加に伴い、気温が高い時には外出を控えることや、断熱住宅やエアコンなどの予防措置を検討することが大切だと指摘している。
東アジア特有の梅雨の影響を考慮した研究は初
これまで気温上昇が脳卒中リスクを上昇させる報告はあったが、東アジア特有の雨季(梅雨)の影響を考慮した研究はなく、特に梅雨明け後の猛暑が高齢者脳卒中搬送リスクに関連していることが新たにわかった。今回の成果について研究グループは、「気候変動対策と脳卒中予防の観点からも極めて有用な情報を提供するものと思われる」と、述べている。
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