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保存期CKD患者調査、約2割が「診断を受けるまでに5年以上」-ベーリンガーほか

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2022年12月20日 AM11:16

透析導入前の日本人CKD患者の経験や負担に関する報告は限定的だった

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社と一般社団法人ピーペックは12月15日、日本での、透析や腎移植に至っていない保存期の慢性腎臓病()患者の経験や負担を明らかにする目的で実施した調査研究の結果を発表した。この研究は、同社と、一般社団法人ピーペックの宿野部武志代表理事、大阪医科薬科大学腎臓内科の美馬晶氏によるもの。研究成果は「Advances in Therapy」に掲載されている。

CKDは腎障害や腎機能の低下が持続する疾患で、CKDが進行すると末期腎不全に至り、通常透析療法や腎移植術が必要となる。また、CKDは死亡や心筋梗塞、脳卒中、心不全などの心血管疾患のリスクファクターである。CKDの治療目的は、腎機能の低下を抑え末期腎不全への進行を遅らせること、および心血管疾患の発症を予防することである。CKD患者は日々の生活習慣の改善、カロリー、塩分、タンパク質の摂取制限、高血圧や糖尿病などの原疾患に対する薬物治療など、総合的な治療・管理が求められ、生活改善や治療に伴う経済的な負担だけでなく生活の質を低下させるとされている。しかし、これまでに透析導入前の保存期のCKD患者の経験や負担を明らかにした報告は限られていた。

調査対象は、維持透析および腎移植を受けていない20歳以上の日本人CKD患者342人

研究グループは、維持透析や腎移植を受けていない保存期CKD患者の疾患および治療の経験や認識を把握することを目的に、複数のパネルを介して募集した維持透析および腎移植を受けていない(受ける予定のない)20歳以上の日本人CKD患者342人(50~60代が約半数)を対象に、ウェブによる匿名アンケート調査として2020年10~11月に実施した。専門家のアドバイスのもとに作成した質問票を用いて、患者の背景、疾病・治療、日常の負担、および今後の治療へのニーズや期待を収集した。

また、患者団体から推薦された患者5人と共に、2020年12月にアドバイザリーボードを実施し、主に、アンケート調査の結果を基に事前に設定したトピックに焦点を当て、調査結果を補足、解釈するために必要な情報を収集した。

「CKDの治療を始める際、治療のゴールを共有された」14.3%

調査の結果、次のようなことが明らかになった。CKDの診断のきっかけについては、81.0%が健康診断および他疾患の治療時と回答し、CKDの診断を受けるまでの期間が5年以上だった割合が20.8%だった。CKDはその成因の違いからくる多様性が際立つ疾患であり、診断までに大幅な期間を要するケースがあることがわかった。さらに、CKDの治療を始める際、治療のゴールを共有された回答者は14.3%にとどまっており、明確なゴールの提示がないことへの不安や、ゴール自体の定義に関する疑問などがあることがわかった。

「診断を受けるまでCKDを知らなかった」65.7%

疾患への理解について、診断を受けるまでCKDを知らなかったと回答したのは65.7%だった。これらの結果に伴い、CKDへの周囲の正しい理解や支援がいまだ不足しており、それらの提供を促す必要があることが明らかになった。加えて、CKD患者は、同じ疾患の患者のことをもっと知りたいと思っているが、保存期の患者同士の交流の場は十分ではないなど、共通する患者のニーズ・優先事項が明らかになった。

CKDに対する理解促進、患者同士のコミュニケーションの場づくりの必要性が明らかに

CKD患者である宿野部氏は、研究成果について、次のように述べている。「現在、医療やライフサイエンスの領域においてPPI(患者市民参画)が進み、医療におけるさまざまな場面でも病気をもつ立場からの参画の機会がひろがっている。今回は私自身がもつ『腎臓病』をテーマに研究に関わらせていただいたことに大変感謝している。研究成果が腎臓病をもつ方の幸せにつながり、またこれからの腎臓病医療において貢献できることを心から願っている」。

また、美馬氏は「CKDに関する調査は多く実施されている中、透析に至っていない患者である保存期CKD患者の負担や日常などを調査した研究は限定的だった。今回の研究により、明確な診断基準があるにもかかわらず、診断までに5年以上かかっている患者が約2割に上り、CKDに対する理解促進、および患者さん同士のコミュニケーションの場をより多く作っていく必要性が明らかになった」と、述べている。

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