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小脳プルキンエ細胞に巨大ラメラ体形成の疾患モデルマウスを作製-徳島大ほか

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2022年12月14日 AM10:14

CTCF遺伝子領域変異、知的発達遅滞や発育不全・行動異常を示す報告

徳島大学は12月13日、運動調節機能に重要な小脳のプルキンエ細胞で、幾重にも重なった膜で構成された巨大ラメラ体が形成されるマウスの作製に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学研究部機能解剖学分野の平山晃斉准教授、大阪大学大学院生命機能研究科の八木健教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Acta Neuropathologica Communications」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

CCCTC結合タンパク質(CTCF)はDNAに結合するタンパク質で、DNAに結合したCTCF同士がさらに結合することで染色体のループ構造形成に働く。こうして形成された染色体の3次元的な立体配置は、遺伝子の発現制御に大きく影響する。これまでに、CTCF遺伝子領域に変異があり、知的発達遅滞や発育不全、行動異常を示す例が報告されている。しかし、CTCFの神経系における役割はいまだ不明な点が多くある。運動制御の中枢である小脳では、プルキンエ細胞が小脳皮質からの唯一の出力神経細胞として働いている。マウス小脳では、プルキンエ細胞でCTCFが強く発現していることから、重要な役割を果たしていることが想定された。

CTCF欠損マウス、進行性の運動機能障害など示す

研究グループは、小脳プルキンエ細胞でCTCFを欠損させたマウスを作製。その解析から進行性の運動機能障害を示すこと、プルキンエ細胞の樹状突起に自己回避の異常が見られること、樹状突起上の登上線維の神経支配領域が細胞体側にシフトすることを見出した。

、クラッベ病で報告例のある巨大ラメラ体

また、プルキンエ細胞の樹状突起に巨大ラメラ体と呼ばれる特異な構造が形成されていることを発見。巨大ラメラ体は、ウェルドニッヒ・ホフマン病、13q欠失症候群、クラッベ病で報告例があり、神経変性疾患との関連が示唆されてきた。詳細な解析の結果、巨大ラメラ体は小胞体が層状に集積することで徐々に形成され、時間とともに巨大化していくことが明らかとなった。一方で細胞核周辺の小胞体は著しく減少し、最終的にはプルキンエ細胞が小脳から消失。また、これに伴いCTCF欠損マウスの運動機能が著しく低下することがわかった。

巨大ラメラ体形成でプルキンエ細胞消失、重篤な運動失調を引き起こすことを示唆

今回の研究では、CTCFを欠損させることで小脳プルキンエ細胞の樹状突起に巨大ラメラ体が形成されることを初めて実験的に示すことに成功した。これまでに巨大ラメラ体の形成が報告されているウェルドニッヒ・ホフマン病、13q欠失症候群、クラッベ病の原因遺伝子がどれも異なることから、巨大ラメラ体の形成は、複数の疾患で共通する神経病理的変化である可能性が高いと考えられるという。

また、巨大ラメラ体の形成により、最終的にプルキンエ細胞が消失し、重篤な運動失調を引き起こすことが示唆された。巨大ラメラ体形成のモデルマウスが確立されたことで、巨大ラメラ体形成の分子メカニズムを明らかにし、なぜ樹状突起に巨大ラメラ体が形成されるのか、また巨大ラメラ体の形成とプルキンエ細胞の消失の間にはどのような関係があるのかの解析を実験的に行うことが可能となる、と研究グループは述べている。

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