65歳以上の大分県別府市民1万人以上を対象に、温泉利用状況と既往歴を調査
九州大学は11月30日、65 歳以上の大分県別府市民1万人以上に対するアンケートを実施し、高血圧の既往の少なさに夜間の温泉利用が関連していることを見出したことを発表した。この研究は、同大病院別府病院内科の堀内孝彦教授、前田豊樹准教授、山崎聡講師、得能智武講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
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高血圧は病院受診の最大の原因であり、治療期間が長く、医療経済への負担が大きい疾患である。日本では50歳以上の男性および60歳以上の女性の60%以上が高血圧に罹患している。厚生労働省からは、65歳以上の高齢者と高血圧は新型コロナウイルス感染の重症化の主なリスク要因と発表されている。温泉利用は高血圧の抑制効果が期待されてきたが、温泉利用と高血圧の関連についての詳細は不明なままだった。そこで、研究グループは、2011年に65歳以上の大分県別府市民1万人以上に対して、温泉の利用状況と既往歴に関するアンケート調査を実施した。
夜間の温泉習慣、慢性ストレスによる睡眠障害の改善~高血圧発症予防に関連の可能性
その結果、高血圧の既往の少なさに夜間の温泉利用が関連していることが判明した。ロジスティック回帰分析で85歳以上、既往歴として不整脈、脳卒中、痛風、糖尿病、脂質異常症及び腎機能障害が高血圧発症のリスク因子であることもわかった。また、夜間の温泉利用と慢性肝炎の既往が高血圧の少なさに関与していることもわかった。
研究グループは「夜間の温泉習慣は慢性ストレスによる睡眠障害の改善につながり高齢者の高血圧発症の予防に関連している可能性が考えられる。今後、計画的な無作為比較試験の実施が必要」と、述べている。
なお、研究成果は、第88回日本温泉気候物理学会医学会総会・学術集会(2023年5月12日・13日)で発表される予定。
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