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COVID-19急性期治療、漢方薬で発熱緩和・重症化抑制の可能性-東北大ほか

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2022年11月29日 AM11:04

COVID-19軽症~中等症1患者を対象に、漢方薬の急性期症状緩和と重症化抑制効果を検討

東北大学は11月28日、)急性期症状に対して、漢方薬が発熱緩和や重症化抑制に効果がある可能性を2つの研究で明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院総合地域医療教育支援部および東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座の石井正教授、高山真特命教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Internal Medicine」と「Frontiers in Pharmacology」に、それぞれ掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

COVID-19の急性期治療に新規薬剤が開発され使用されているが、いまだ、大多数の軽症~中等症1 患者を対象とした汎用性のある薬剤はない。そこで研究グループは今回、COVID-19急性期症状に対する一般的対症療法薬や医療用漢方薬の使用が、感冒症状と重症化にどのように影響を与えるかを検討した。

対象者962人のうち528人が漢方薬を含んだ対症療法を受けていた

1つ目の研究は、2020年1月1日~2021年10月31日まで、日本国内の病院と医療機関からCOVID-19またはその疑いのある患者のデータを登録し、多施設共同、後ろ向き観察研究として実施。全国23の医療機関より、実施された治療に関するデータ(従来の薬剤や漢方薬など)、および一般的な感冒様症状(発熱、咳、痰、、疲労、下痢など)の変化に関するデータをカルテから収集、登録した。東北大学では、大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座が研究事務局を務め、同大病院総合地域医療教育支援部が行った宮城県軽症者等宿泊療養施設における往診のデータを登録の一部として使用した。

主要評価項目は発熱改善までの日数(体温37℃未満)、副次的評価項目は症状緩和と酸素投与が必要となる呼吸不全への悪化とした。転帰は、漢方薬投与の有無で治療成績を比較した。計1,314例が登録され、そのうち962人の患者データを解析した。解析対象者では528人が漢方薬を含んだ対症療法(漢方群)、434人が漢方薬を含まない対症療法(非漢方群)を受けていた。

漢方薬投与群は非漢方群に比べ、呼吸不全の増悪リスク「低」

COVID-19の病期分類と重症化リスク因子で調整した結果、全体として発熱およびその他の症状改善までの日数に群間差は認められなかった。一方で、対象をCOVID-19確定症例に限定し、ステロイド投与を受けず、発症から4日以内に治療を開始した症例で統計解析を行ったところ、呼吸不全への悪化のリスクは、非漢方群に比べ漢方群で有意に低い結果となった(オッズ比=0.113, 95%信頼区間; 0.014-0.928, p=0.0424)。使用頻度が多かった漢方薬は葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏の併用だった。薬物投与に関連する重大な有害事象に有意な群間差はなかった。

同研究により、早期の漢方薬治療でCOVID-19の病状悪化リスクが抑制される可能性が示された。しかし、ランダム化の比較試験を行わないと実際の効果が明らかにならないことから、さらなる研究を展開した。

葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏の併用は解熱効果あり、呼吸不全増悪抑制に貢献する可能性

2つ目の研究では、多施設共同ランダム化比較試験により、COVID-19急性期症状に対する漢方薬「葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏」の追加投与の効果と安全性を検証した。

研究では、東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座が研究事務局を務め、東北大学病院総合地域医療教育支援部が行った宮城県軽症者等宿泊療養施設における往診のデータが登録の一部として使用した。軽度および中等度のCOVID-19患者を、通常治療(解熱剤や鎮咳剤投与)を行う対照群と、漢方薬の葛根湯エキス顆粒(2.5g)と小柴胡湯加桔梗石膏エキス顆粒(2.5g)を1日3回、14日間投与するグループにランダムに割り付け、その効果を比較検討した。主要評価項目は症状緩和までの日数、副次的評価項目は各症状が軽快するまでの日数および呼吸不全への増悪とした。

計161人の患者(漢方薬群; n=81、対照群; n=80)が登録された。症状緩和に関する統計の結果、両群間に有意差はなかった。一方、競合リスクを考慮した共変量調整後累積発熱率では漢方薬群の方が対照群より有意に回復が早く(ハザード比1.76, 95%信頼区間 1.03-3.01; p=0.0385)、さらにCOVID-19中等度1患者における呼吸不全への増悪リスクは、対照群に比べ漢方薬群で低かった(リスク差,−0.13; 95%信頼区間, −0.27–0.01; p=0.0752)。また、薬物投与に関連する有害事象に有意な群間差はなかった。

同研究により、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏の併用は解熱効果があり、COVID-19中等症1患者における呼吸不全への増悪抑制に貢献できる可能性が示された。

今回実施した2つの研究成果から、一部の漢方薬が軽症~中等症1の大多数のCOVID-19患者の症状緩和、重症化抑制に貢献することが期待される。また、漢方薬は安価であり、経済的・医療的なメリットも期待される、と研究グループは述べている。

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