プレバイオティクスで腸内細菌の持つ5AR遺伝子レベルは変化するのか?
藤田医科大学は11月25日、胆汁酸代謝物であるイソアロリトコール酸(IsoalloLCA)とプレバイオティクスの関係の一部を解明したと発表した。この研究は、同大消化器内科学医科プレ・プロバイオティクス学の廣岡芳樹教授、栃尾巧教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」オンライン版に掲載されている。
IsoalloLCAは胆汁酸より代謝される生体成分の一つで、「健康長寿のヒトでは増加している」などの報告がある。5AR遺伝子の検出とヒトにおける変化を調べることはヒトの健康をモニタリングする新たな方法の開発につながる可能性が示唆され、学術的価値のみならず社会的意義も大きい。一方、同成分はバクテロイデス門に分類される特定の腸内細菌の持つ5AR遺伝子により生成されることがデータ上では知られていたが、ヒトの腸内細菌由来DNAから5AR遺伝子を正確に検出し、また、プレバイオティクス・プロバイオティクスなどにより5AR遺伝子レベルが変化するかについては報告されていなかった。
研究グループは今回、腸内細菌の持つ5AR遺伝子を特定し、ヒトにおいて有用性が報告されているプレバイオティクス「ケストース」を摂取することにより、5AR遺伝子レベルに変化があるか調べた。
ヒト腸内細菌がもつ5AR遺伝子を検出可能、ケストース摂取で5AR遺伝子レベル向上
研究では、糖尿病予備群患者を対象とし、12週間の摂取試験を実施。ケストース摂取群(n=20)とプラセボ群(n=16)の腸内細菌叢における5AR遺伝子レベルを摂取前と摂取後に比較検討した。その結果、ケストース摂取群では5AR遺伝子レベルが有意に上昇し(p=0.015)、プラセボ群では上昇せず(p=0.379)、ケストース摂取はヒト腸内細菌叢における5AR遺伝子レベルを上昇させることが示された。
これらの結果から、ヒトの腸内細菌が有する5AR遺伝子が検出できること、また、ケストースのようなヒトに対する明確な有用性が報告されているプレバイオティクスを摂取することで5AR遺伝子レベルを向上させることが可能であることが示唆された。
プレ・プロバイオティクスの効果の効果検証にも有用
同結果は、腸内細菌の5AR遺伝子がヒトの健康指標となる可能性があること、また、有用なプレ・プロバイオティクスの効果をスクリーニングする場合のターゲット遺伝子になる可能性が考えられ、将来的にはヒトにより有用なプレ・プロバイオティクスの開発につながることが期待できる。
今回の研究成果により、腸内細菌叢における5AR遺伝子の機能の一部が明らかにされた。「今後、健康指標のマーカーとして利用したり、さまざまな有用プレ・プロバイオティクスの開発の指標として利用できることが期待される」と、研究グループは述べている。
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・藤田医科大学 プレスリリース