胸部レントゲン写真による間質性肺疾患の検出は困難だった
札幌医科大学は11月16日、胸部レントゲン写真上で線維化をきたす「間質性肺疾患」を検出するAIプログラムを開発したと発表した。この研究は、同大医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座(千葉弘文教授)の錦織博貴講師らの研究グループ(医学部呼吸器・アレルギー内科学講座、医学部放射線診断学、附属総合情報センター企画開発室)と、エムスリー株式会社との共同研究によるもの。研究成果は、「European Respiratory Journal」に掲載されている。
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特発性肺線維症(IPF)をはじめとする進行性の線維化を伴う間質性肺疾患の患者に対して、抗線維化薬による早期治療が重要であると言われている。しかし、間質性肺疾患を胸部レントゲン写真で検出することは容易ではなく、特に早期の病変を検出することは困難だ。そこで、研究グループとエムスリーは、胸部レントゲン写真上で線維化を伴う間質性肺疾患を検出するAIプログラムの開発を試みた。
AIプログラムで線維化を伴う間質性肺疾患を検出、専門医に劣らない性能で
2003年1月1日~2019年12月31日までに同大附属病院を受診した線維化を伴う間質性肺疾患の患者と、その他疾患の患者(画像上、異常がない患者を含む)を対象に、胸部レントゲン画像を、同大附属病院医療情報部が抽出・匿名化し、AIに学習させることによってプログラムを作成。試験用の胸部レントゲン画像を用いて検出能を評価した。
同研究を2019年3月19日~2021年12月31日まで行った結果、AIプログラムが呼吸器専門医や放射線診断医に劣らない性能で、線維化を伴う間質性肺疾患を検出できることが判明した。
線維化を伴う間質性肺疾患の早期発見・治療につながることに期待
被曝や費用の問題から、胸部CT検査は全ての患者に行われるわけではない。それに対し、胸部レントゲン検査はほとんどの医療機関で、比較的簡便に、繰り返し行うことができる。今回開発されたAIプログラムにより、非専門医でも線維化を伴う間質性肺疾患を検出することが容易になり、早期発見・早期治療につながることが期待される。
「本研究をもとに学習データを増やすことで、さらにプログラムの性能の改善(特に他の異常所見による偽陽性率を下げる)、本学以外の施設、設備のレントゲンでも同程度の性能で病気を検出できるかの検証を行い、AIプログラムの製品化を目指している」と、研究グループは述べている。
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