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救急往診サービスで緊急度を低く見積もられる患者予測モデル作成-筑波大ほか

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2022年11月08日 AM10:23

救急往診サービスの緊急度判定でアンダートリアージを予測するモデルは存在しなかった

筑波大学は11月4日、機械学習を用いて、実際の緊急度よりも低く判定されてしまう「」になる患者を予測するモデルを作成したと発表した。この研究は、同大医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授と井口竜太准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Annals of Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

救急外来の混雑を解消するため、医師が直接自宅で診療する夜間・休日の時間外救急往診サービスの運用が、多くの国で始まっている。日本でもファストドクター株式会社が2016年に時間外救急往診サービスの提供を開始した。その効果を科学的に評価し、効率的で安全な救急医療を社会に提供することを目的に、同大は2019年よりファストドクター社との共同研究を行っている。同社の救急往診サービスにおいては、患者から電話を受けると、主訴別に作成された「緊急度判定プロトコル」(総務省消防庁)に基づき、救急車は必要か不要か、病院受診は必要か不要かなどの緊急度判定を行う()。そこで、実際の緊急度よりも低く判定されてしまうと(アンダートリアージ)、患者の予後が悪くなる。

近年、救急外来において、機械学習を用いた予測モデルを導入することにより、アンダートリアージが減少したという報告がある。しかし、救急往診サービスの緊急度判定において、アンダートリアージを予測するモデルを作成した研究はない。そこで研究グループは今回、機械学習を使ってアンダートリアージになる患者を予測するモデルを作成した。

アンダートリアージは1.6%、平均年齢38.4歳、男性57.2%、主な主訴は感冒症状・失神

研究では、2018年11月1日〜2021年1月31日にファストドクター社を利用した16歳以上の全患者の匿名データを利用した。

救急往診サービスでは、患者から電話がかかってくると、緊急度評価を5段階で行う。そして、病院受診が必要と判断された3(自力で6時間以内に受診が必要、黄色)と4(自力で1時間以内に受診が必要、橙)の患者を対象に往診を行う。今回は、救急往診サービスの医師が3と4の患者を診察後、3段階で緊急度の評価を行い、救急車が必要だったと判断したものをアンダートリアージと定義した。

機械学習に利用した患者の情報は、年齢、性別、併存疾患(10項目)、主訴(80項目)。研究期間中に救急往診サービスを利用した患者は4万4982人で、1万9114人が分析対象となった。この中でアンダートリアージの患者は298人(1.6%)だった。対象患者の平均年齢は38.4歳、57.2%が男性、主な合併症は高血圧と慢性肺疾患、主な主訴は感冒症状と失神だった。

ランダムフォレストが最も予測性能「良」、アンダートリアージと判定されやすい特徴判明

機械学習には、サポートベクターマシン(SVM)、ラッソ回帰(LR)、ランダムフォレスト(RF)、勾配ブースト決定木(XGB)、ディープニューラルネットワーク(DNN)の5つのアルゴリズムを使い、それぞれのモデルの性能を評価した。この中で、最も性能が良かったモデルにおいて、どの情報があるとアンダートリアージになりやすいかも調べた。

作成したモデルの中では、ランダムフォレスト(RF)を用いたものが最も予測性能が良い結果となった。また、年齢では高年齢、合併症では高血圧、糖尿病、脳梗塞、認知症、主訴では感冒症状、頭痛、アレルギー反応があると、アンダートリアージになりやすいことが判明した。

モデルを救急往診サービスに導入し、アンダートリアージ減少の効果検証を行う予定

今回研究成果により、高年齢や合併症がアンダートリアージに関連していることが示された。これは、今までの研究結果と一致しているという。これに加え、感冒症状、頭痛、アレルギー反応といった主訴がアンダートリアージになりやすいということが明らかになった。同結果を利用することで、アンダートリアージになりやすい主訴のプロトコルの改定を優先して進めることが可能になると考えられる。

同研究グループは今後、今回作成したモデルを救急往診サービスに導入し、実際にアンダートリアージが減ったか否かの効果検証を行う予定だとしている。

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