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肝硬変、肝線維化の進行抑制にレトロゾールが有用な可能性-新潟大ほか

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2022年10月31日 AM10:32

ヒト肝細胞キメラマウスに既存薬36種類を投与し遺伝子発現変化を検討

新潟大学は10月28日、遺伝子発現変化に基づくドラッグリポジショニングの手法により、乳がん治療などに使用されているレトロゾールに、肝線維化の進行を抑制する効果があることをマウスで明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部医学科総合診療学講座/大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の上村顕也特任教授、同分野の酒井規裕特任助教、寺井崇二教授、長崎大学病院薬剤部の大山要教授、同大学生命医科学域薬剤学分野の宮元敬天助教、同実践薬学分野の中嶋幹郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Gastroenterology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

肝硬変は、慢性ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、、自己免疫性肝疾患などの原因により、肝細胞が壊死・再生を繰り返す過程で、肝線維化を生じることで成立するといわれている。・肝線維化に対する決定的な治療法はいまだ開発されておらず、新たな治療法の発見・開発が望まれている。一方、新規薬剤の開発には膨大な経費が掛かるため、すでに使用されている既存薬の新しい効能を発見し、他の疾患にも使用する創薬戦略であるドラッグリポジショニングの研究が進んでいる。

研究グループは、肝硬変の新規治療法開発のために、このドラッグリポジショニングの手法に着目した。肝臓の多くがヒト肝細胞で構成されるヒト肝細胞キメラマウスに、既存薬36種類を投与した際の肝臓での遺伝子発現変化を検討。その結果、レトロゾールが線維化関連遺伝子を強く抑制することを見出した。そこで、レトロゾールを複数の濃度で肝臓を構成しているヒト肝細胞、ヒト肝星細胞に投与して、遺伝子変化を検討。また、特殊な食事、薬物投与による2種類の肝線維化モデルマウスを対象として、レトロゾールを投与し、肝細胞内での遺伝子発現変化、肝線維化進展抑制効果、などを検討した。

レトロゾールがHsd17b13遺伝子など発現制御→レチノイン酸代謝変化で線維化を抑制

網羅的遺伝子変化解析の結果、レトロゾールの投与後にCTGFなど線維化関与遺伝子群の発現が大幅に低下することが判明。レトロゾールをヒト肝細胞に投与したところ、用量依存的に線維化関連遺伝子の発現が低下した。

肝線維化モデルマウスでも、レトロゾール投与によりCTGFなどの肝線維化関連遺伝子の発現低下を認め、肝臓の組織や血液マーカーの解析でも肝線維化の進展抑制効果を認めた。そして、レトロゾールがHsd17b13遺伝子などの発現を制御した結果、レチノイン酸の代謝が変化し線維化抑制効果が現れることが示唆された。

今後、適切な用量やレチノイン酸代謝調節のメカニズム解明を

今回の研究結果から、ドラッグリポジショニングの手法が肝硬変の新規薬剤の開発に有用な戦略であることが明らかとなった。そして、肝硬変の病態進行の抑制にレトロゾールが有用である可能性が示唆された。研究グループは、有効な新規治療薬の開発につながる可能性があるとしたうえで、適切な用量やレチノイン酸代謝調節の詳細なメカニズムの解明を継続する必要がある、と述べている。

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