早産児はASD発症リスク「高」、メカニズムは不明
関西医科大学は10月21日、世界で初めて自閉スペクトラム症(以下、ASD)を持つ早産児の腸内細菌叢(腸内フローラ)の特徴について検証し、発達障害のない定型発達(以下、TD)児の腸内フローラと大きく異なることを発見したと発表した。この研究は、同大小児科学講座 藤代定志助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Autism and Developmental Disorders」に掲載されている。
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ASDは頻度の高い神経発達症の一つで、コミュニケーションや社会性の障害、反復的かつ制限的な行動などを特徴とする。一方、早産児は運動や言語の発達、認知機能や行動発達に問題が生じるリスクが高く、注意欠如多動症やASDの発症リスクが高いとされている。ASDの有病率は2~3%程度だが早産児では8%程度と、約4倍発症リスクが高くなる。
ヒトの体内には40兆個以上の細菌が存在し、90%以上が腸内に存在している。腸内フローラは、ヒトの腸管内でバランスのとれた群集として共存し、脂質、タンパク質、難消化性物質の代謝や、短鎖脂肪酸の生産を行っている。近年、次世代シークエンサーを用いた16S rRNA遺伝子解析により、腸内フローラの詳細な解析が可能になった。そして、腸内フローラの乱れ(以下、ディスバイオーシス)が、さまざまな疾患の発症に関与することがわかってきた。近年では、腸内フローラと脳機能の間には「腸脳相関」と呼ばれる相互関係があることが知られ、腸内フローラが脳機能に及ぼす影響が注目されている。
これまで、早産児ではASD発症リスクの高いことが知られていたが、その機序や早産の子どもの中でも、どのような子がASDを発症しやすいのかについては明らかになっていない。そこで研究グループは今回、早産で生まれた児を対象に、ASD児におけるディスバイオーシスの特徴を明らかにすることを目的として研究を行った。
ASDはTDより腸内フローラの多様性が高く、特定の腸内細菌が発症に寄与の可能性
研究では、在胎37週未満で出生し、5歳時点でASDと診断された小児患者7例(ASD群)と、同じく早産で生まれた定型発達の小児9例(TD群)を対象とした。
対象者の便を採取し、便中の細菌DNAを抽出して16S rRNA遺伝子解析を行い、腸内フローラの多様性と細菌構成について検討した。また、腸内フローラに直接影響を与える抗菌薬やプロバイオティクスの使用状況、偏食の有無などのアンケート結果や、出生状況および出生後の治療を解析した。
その結果、ASD群ではTD群に比べて腸内フローラの多様性が高いことが判明。また、ASD児の腸内フローラの構成はTD群と比較して、門レベルではFirmicutesが多く、目レベルではClostridiales目が多いことがわかった。また、種レベルではRuminococcus gnavus、Bifidobacterium、longumが有意に多く、Megasphaera speciesとSutterella wadsworthensisが有意に少ないことがわかった。この中でも、Ruminococcus gnavusは腸管粘液の主成分であるムチンを分解して粘膜層を脆弱化することが報告されており、この作用により腸内細菌が血管内に入り込み、ASDの発症に寄与している可能性があるとしている。
ASDの病因解明や新たな治療法開発につながることに期待
今回の研究により、早産で生まれたASD児における腸内フローラの乱れの特徴が明らかにされた。「本研究成果が、ASDの病因解明や新たな治療法開発につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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