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理研 脳内炎症で疲労倦怠感が発生することを明らかに

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2014年03月26日 AM06:00

末梢組織のウイルス感染模擬ラットで確認

独立行政法人理化学研究所は3月13日、末梢からのウイルス感染を模擬したラットを用いた研究で、脳内炎症により疲労倦怠感が生じることを明らかにしたと発表した。この研究成果は、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター細胞機能評価研究チームの片岡洋祐チームリーダー、大和正典研究員らの研究チームによるものという。研究の詳細は、3月12日付の「PLOS ONE」に掲載された。

インフルエンザなどをはじめウイルスに感染すると、発熱や筋肉痛のほか、しばしば強い疲労倦怠感が生じる。近年、さまざまな要因によって生じる疲労感は脳で感じるものであることなどが分かってきているが、その原因別の発生メカニズムは未解明だった。

そこで研究チームは、感染症の動物モデルとして、人工合成した2本鎖RNA「Poly I:C」を末梢組織に投与した、一過性の発熱や数日間続く自発活動の低下など、インフルエンザ感染症状を示す疑似ウイルス感染ラットを作成。このラットを用いて、疲労症状と炎症性物質の関連を検証した。

(画像はプレスリリースより)

発熱と疲労倦怠感の発生メカニズムは別

研究チームではまず、発熱と疲労倦怠感の関係を明らかにするため、PolyI:Cに加え、COX-2の作用を阻害する薬剤「NS398」を投与。するとラットの発熱は抑えられたものの、自発活動の低下に回復はみられず、発熱と疲労倦怠感は異なる分子メカニズムによって発生していることが強く示唆されたという。

次に、PolyI:C投与後のラットで脳内物質の変化を調べたところ、インターロイキン-1b(IL-1b)をはじめとする炎症性サイトカインの強い発現上昇を確認。この神経炎症を抑えるため、IL-1受容体アンタゴニストを投与したところ、自発活動の低下現象はまったく起こらなくなったそうだ。

脳内におけるIL-1bがカギ

IL-1受容体アンタゴニストは生体の脳でも作られる内在性分子であり、今回用いたPolyI:C投与後のラット脳内でも、大脳皮質や海馬を含む各領域でその発現が増強していたという。一方、脳内でのIL-1受容体アンタゴニストの作用を抑制すると、自発行動の回復が遅れることも確認されている。

これらの結果から、ウイルス感染に伴う疲労倦怠感は、脳内におけるIL-1bの産生が引き金となっていること、また脳内で作られるIL-1受容体アンタゴニストがその作用に対抗するかたちで、疲労倦怠感からの回復を促進する働きを担っていることが明らかとなった。

さまざまな病気に伴う疲労倦怠感の治療法開発へ

研究グループでは、脳内で作られるIL-1受容体アンタゴニストの産生に障害が起きた場合、一過性の感染や炎症が治癒した後も疲労倦怠感が軽減されず慢性化する可能性があると指摘。今後、疲労倦怠感からの回復や慢性化に至る詳細なメカニズムに着目し、さらなる研究を重ねることで、さまざまな病気に伴う疲労倦怠感の治療法開発へつなげていきたいとしている。(紫音 裕)

▼外部リンク

独立行政法人理化学研究所 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2014/

Brain Interleukin-1β and the Intrinsic Receptor Antagonist Control Peripheral Toll-Like Receptor 3-Mediated Suppression of Spontaneous Activity in Rats
http://www.plosone.org/article/0090950

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