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血中ビタミンD欠乏、将来的なサルコペニア罹患率上昇と関連の可能性-長寿研ほか

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2022年10月20日 AM10:31

血中ビタミンD量低値者、4年後の筋力変化や筋量変化・新規サルコペニア発生数など検討

名古屋大学は10月18日、血中ビタミンD量が不足している者は将来的なサルコペニア罹患率が上昇すること、筋線維内ビタミンDシグナル伝達の低下が筋力低下と直接的に関連していることなどを、「NILS-LSA(・老化に関する長期縦断疫学研究)」の縦断解析および、ビタミンD受容体を成熟した筋線維で欠損させた遺伝子組換えマウスを用いた基礎研究により明らかにしたと発表した。この研究は、国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部の細山徹副部長、名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学の水野隆文医員を代表とする研究グループと、国立長寿医療研究センター老化疫学研究部、名古屋学芸大学、、松本歯科大学、医療創生大学との共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

サルコペニアは、加齢に伴って生じる骨格筋減弱症であり、超高齢社会を迎えた日本においてその対策は喫緊の課題だ。しかし、サルコペニアの発症や増悪化の分子機構は不明であり、また、診断や発症予測に有用な分子マーカー(バイオマーカー)の同定にも至っていない。ビタミンDはヒトの体で生合成される脂溶性のビタミンで、先行研究により加齢性の量的変動やサルコペニアとの関連性が指摘されてきた。しかし、先行研究の成果の多くが培養細胞を用いた実験や横断的な疫学研究から得られたものであり、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用や加齢性疾患であるサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠が十分に提示されたとは言い難い状況だ。

研究グループは今回、国立長寿医療研究センターで実施している老化に関する長期縦断疫学研究「NILS-LSA」のデータを用いて、血中ビタミンD量が低値の者の4年後の筋力変化や筋量変化、さらに新規サルコペニア発生数などについて検討した。

ビタミンD欠乏で将来的な筋力低下→サルコペニア罹患率上昇を示唆

NILS-LSAの1,919人のデータからPropensity score matchingにより調整したビタミンD欠乏群(血中の25OHD量が20ng/ml以下、N=384)および充足群(N=384)の比較解析から、ビタミンD欠乏群では筋力低下が進行し(p=0.019)、また、サルコペニアの新規発生数も有意に増加(p=0.039)することを見出した。このことは、ビタミンD欠乏が将来的な筋力低下を導き、結果としてサルコペニア罹患率が上昇することを示唆している。

成熟筋線維のビタミンDシグナル低下・抑制、Serca発現を介して筋収縮に影響

続いて、疫学研究で得られたビタミンD欠乏と筋力低下の分子メカニズムを明らかにするために、ビタミンD受容体遺伝子Vdrを成熟した筋線維で特異的に欠損させたコンディショナルノックアウト(VdrmcKO)マウスを新たに作出。同マウスでは、骨格筋の遅筋線維と速筋線維の両方でVdrが欠損し、両筋線維タイプでビタミンDによるシグナル伝達が抑制された状態になる。同マウスの表現型を解析したところ、筋重量、筋線維径、筋線維タイプ、骨格筋幹細胞数など骨格筋の量的形質には影響は見られず、その一方で、VdrmcKOマウスでの有意な筋力低下を認めた。

さらに同マウスでは、筋線維の収縮・弛緩に関わる遺伝子Serca1とSerca2aの発現が減少し、骨格筋における筋小胞体Ca2+-ATPアーゼ活性も低下していた。これらの結果は、成熟筋線維におけるビタミンDシグナルの低下もしくは抑制がSerca発現を介して筋収縮に影響を与え、結果として筋力低下が引き起こされることを示している。

血中ビタミンD、サルコペニア発症予測バイオマーカーとなる可能性

今回の研究結果により、ビタミンD欠乏と将来的な筋力の低下およびサルコペニア罹患率の上昇との関連性が明らかになった。さらに同研究では、疫学研究の結果を補完する形で行った基礎的検討により、成熟した筋線維におけるビタミンDシグナルの役割の一つが筋力発揮への寄与であること、さらに、その分子機序としてSerca発現を介して筋収縮・弛緩を制御していること、などもin vivo実験系で証明した。

高齢者においてビタミンDが不足しがちになることは広く知られており、今回の研究により、高齢者で生じる筋力低下やサルコペニア発症にビタミンD不足が深く関わる可能性が示された。より長期的な検証が必要だとした上で、同研究の成果は血中ビタミンDがサルコペニアの発症を予測するバイオマーカーの一つとなり得ることを示しており、サルコペニア予防に貢献すると期待される、と研究グループは述べている。

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