NDBを用いて、子どもと大人のADHDの全国的な新規診断数を調査
信州大学は10月7日、全国の診療データベースを用いた解析により、2010~2019年度に日本で注意欠如・多動症(ADHD)と新規に診断された人数を調べ、大人も子どもも新規診断数が増加したことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部子どものこころの発達医学教室・精神医学教室の篠山大明准教授、本田秀夫教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載されている。
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ADHDは子どもで最も頻度が高い神経発達症の一つであり、半数近くは成人後も診断が持続する。しかし、大人の障害としての認知度が不十分であるため、しばしば過少診断されることがある。
そこで研究グループは今回、日本におけるADHD診断の実態を調査するため、全国の医療データを集約したNDBを用いて、子どもと大人のADHDの全国的な新規診断数の調査を行った。
2010~2019年度に日本で新たにADHDと診断されたのは83万8,265人
2009~2019年度に新たにADHDと診断された人の性別と診断時の年齢グループをNDBから抽出し、2010~2019年度の各年度について、ADHDの新規診断数を対象の年齢グループの総人口で割ることによって、各年度の発生率を計算した。
その結果、2010~2019年度に83万8,265人が日本でADHDと新規に診断されたことが明らかになった。0~6歳の子どもでは女児2万3,292人、男児9万7,986人、7~19歳では女性9万1,891人、男性28万9,862人、20歳以上では女性16万239人、男性17万4,995人だった。
2012年から2017年にかけて、大人のADHD新規診断数が大幅に増加
ADHDの年間発生率は、2010~2019年度の間に0~6歳の子どもで2.7倍(女児2.9倍、男児2.7倍)、7~19歳で2.5倍(女性3.7倍、男性2.2倍)、20歳以上で21.1倍(女性22.3倍、男性20.0倍)に増加していた。特に、2012年度から2017年度にかけての大人のADHDの発生率の増加が最も顕著で、2018年度にピークとなった。
ADHDの頻度の変化を正確に捉えることは病因などの研究や有効な支援体制実現にも重要
今回の研究により、日本におけるADHDの診断率が増加していることが明らかになった。特に成人での大幅な増加には、大人のADHDの認知度の高まりが影響していると考えられる。ADHD治療薬が2012年に日本で初めて成人へ使用が承認されたことも大人のADHDの認知度の高まりに貢献したと推測できるが、同研究では増加の要因については調査していないため、今後の研究で検討する必要がある。
「ADHDの頻度の変化を正確に捉えることは、有効な支援体制の実現のためにも、ADHDの危険因子や病因を研究する上でも重要なことだ。今後もADHDの発生率の動向調査が引き続き行われる予定だ」と、研究グループは述べている。
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