歩行中患者の半月板の動きと関節へ発生する力の関係は?
広島大学は8月31日、超音波装置と三次元動作解析システムを用いて、変形性膝関節症患者の歩行中に生じる半月板の動きと関節の負荷から、逸脱を増悪させる力学的特徴を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科の石井陽介助教ら、コニカミノルタ株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Knee」オンライン版に掲載されている。
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変形性膝関節症は、関節変形の進行に伴い自立した日常生活を困難にさせる。この関節変形は、長年の関節への負荷によりゆっくり進むと考えられてきたが、その進行スピードには個人差があることが問題になっている。そのため、年齢のせいとして片付けるのではなく、個別的な進行原因を理解することが、変形性膝関節症患者の健康寿命の延伸にとって必要だ。
半月板は、関節内に正しく位置することで衝撃を吸収する働きがある。しかし、半月板が関節外へ逸脱していくと、衝撃吸収機能が低下し、変形の進行スピードが加速することがわかっている。そのため、半月板が逸脱する詳細な原因解明は、効果的な治療や予防への取り組みにつながるため、非常に重要だ。変形性膝関節症者の半月板逸脱は、日常生活の繰り返される関節負荷によって増悪することが確認されている。特に、生活動作の多くは歩行が占めていることから、歩行中に半月板を逸脱させる力の解明が求められている。しかし、現在に至るまで、変形性膝関節症者における、歩行中の半月板の動きと関節へ発生する力の関係はわかっていなかった。
歩行後半に生じる膝関節内側への力、日常生活中に半月板を繰り返し逸脱させる
今回の研究は、変形性膝関節症者23人と健常高齢者10人を対象とし、快適歩行中の内側半月板の動きと関節負荷を、超音波検査装置と三次元動作解析システムを用いて同時に測定した。
変形性膝関節症患者は、膝関節の内側に生じる力が健常高齢者より大きく、特に地面を踏み込む際に発生する力と逸脱の関連が確認された。したがって、歩行後半に生じる膝関節内側への力が、日常生活中に半月板を繰り返し逸脱させており、変形性膝関節症特有の力学的特徴が発見されたとしている。
変形性膝関節症の新規治療発展への寄与に期待
今回の研究で歩行中の半月板逸脱を増悪させる力を解明したことで、その力を効率的に減少させる装具や歩き方など、変形性膝関節症患者の新規治療発展に寄与することが期待される。加えて、現在膝に痛みなどの症状がない者にとっても、半月板の逸脱しにくい、適切な歩き方や歩行量など日常生活中に実践できる、具体的な予防方法を提案できる可能性がある、と研究グループは述べている。
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