コンパクトかつ低コストな新タイプの陽子線がん治療システム
株式会社日立製作所と北海道大学は3月7日、共同開発を進めてきた「陽子線治療装置 PROBEAT−RT」について、薬事法に基づく医療機器の製造販売承認を取得したと発表した。2013年度中にも、同システムを使用した治療が北大で開始される予定という。
「陽子線治療装置 PROBEAT−RT」は、陽子線がん治療の世界的な普及を目指し、日立と北海道大学が共同開発した、コンパクトかつ低コストな陽子線がん治療システム。この開発事業は、2010年に国家プロジェクト「最先端研究開発支援プログラム」の採択を受けている。
採択時のテーマは、北海道大学医学研究科・白土博樹教授の「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」。2010年の同プログラムでは、放射線医療分野として唯一の採択だったという。
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それぞれの技術を組み合わせ、小型化を実現。普及に期待
同システムでは、腫瘍を照射する陽子線のビームを拡散させる従来の方式ではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射するスポットスキャニング照射技術を用いた方式に特化。
これに、北大のもつ放射線治療で培ってきた知見と、日立のもつ設計技術を融合させ、ガントリー・照射ノズル・加速器を小型化。さらに装置の機器配置を見直し、大幅な全体のコンパクト化を実現した。日立による従来の「PROBEAT−III」と比較すると、システム全体の設置面積は約7割に縮小されているという。
スポットスキャニング照射技術により、複雑な形状をした腫瘍でも、その形状に合わせて高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることも可能となっている。
北大と日立では、医学・工学分野における両者の技術や知識、経験を組み合わせ、今回の陽子線がん治療システム開発を通じ、QOLに優れた最先端の放射線医療およびがん治療に貢献していきたいとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
北海道大学 プレスリリース
http://www.hokudai.ac.jp/140307_pr_med.pdf