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超急性期脳梗塞におけるペナンブラを反映する血中バイオマーカーを発見-国循ほか

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2022年08月17日 AM10:48

ペナンブラ領域の推定が可能な医療施設は限定的、バイオマーカーの開発が望まれていた

国立循環器病研究センターは8月10日、超急性期脳梗塞における救済可能な脳虚血領域、すなわちペナンブラの血液バイオマーカーを発見したと発表した。この研究は、国内多施設共同研究(Determination of Early Predictor of Ischemic :Adrenomedullin:DEPRISA)において、同科の石山浩之医師、田中智貴医長、齊藤聡医師、猪原匡史部長、滋賀医科大学脳神経内科の北村彰浩講師(学内)、漆谷真教授、京都府立医科大学の小山晃英講師、栗山長門・客員教授らの研究グループが行ったもの。研究成果は、「Brain Pathology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

近年、薬剤による血栓溶解療法やカテーテルを用いた脳血管内治療を含む再灌流療法の台頭により、急性期脳梗塞の予後は著しく改善した。一方、これらの再灌流療法は、発症早期に医療機関を受診することができた一部の脳梗塞症例に適応が限られていた。最近、救済不能な脳梗塞(虚血コア)に至っていない、「」が十分に存在する症例では、発症から時間が経過していても再灌流療法が有効であることが相次いで報告され、その適応範囲が拡大された。

しかし、ペナンブラ領域を推定するためには、専門医による神経症状の評価、頭部画像の専門的な読影や造影剤を用いた画像検査と専用解析ソフトが必要であるため、正確に評価できる医療施設は一部に限られている。このため、ペナンブラを簡便に推定可能な新規のバイオマーカーの開発が望まれていた。

そこで、研究グループは、脳梗塞に反応して生体内で産生されるホルモンであるアドレノメデュリンに着目し、その産生の指標であるmid-regional pro-adrenomedullin ()が超急性期脳梗塞におけるペナンブラと関連するかどうかについて検討した。

発症から4時間半以内に来院した超急性期脳梗塞患者の血漿MR-proADM濃度に着目

2017年~2019年に、発症から4時間半以内に国立循環器病研究センター、または滋賀医科大学脳神経内科を受診した超急性期脳梗塞を対象として、来院後直ちに採血した血漿MR-proADM濃度が、対照群(2013年〜2017年にJ-MICC:Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort研究の健診受診者)と比較して、上昇しているかを調査した。

次に、脳梗塞群において、「症状と虚血コアのミスマッチ」と血漿MR-proADM濃度との関連を調査した。さらに、造影剤を使用した脳灌流画像を撮像していた症例では、専用ソフトウェアで解析したペナンブラ容積と血漿MR-proADM濃度の関連を評価した。

血漿MR-proADM濃度0.54nmol/mL以上が、脳梗塞と関連

超急性期脳梗塞119症例(年齢中央値77歳、男性59.7%)と対照群1,298例(年齢中央値58歳、男性33.2%)の比較では、脳梗塞群で血漿MR-proADM濃度が高値(中央値0.68 vs. 0.42 nmol/mL, P<0.001)だった。また、血漿MR-proADM濃度のカットオフを0.54nmol/mLとすると感度75.6%、特異度90.1%で脳梗塞を判別可能だった。さらに、年齢や性別、腎機能、既往症などの患者背景で調整後も、血漿MR-proADM濃度0.54nmol/mL以上が、脳梗塞と関連(オッズ比7.92倍、P<0.001)することが明らかになった。

ペナンブラ容積と血漿MR-proADM濃度は相関

超急性期脳梗塞119症例は、年齢や性別、腎機能、既往歴などで調整しても、血漿MR-proADM濃度は上述のペナンブラを推定する指標と関連した。さらに、血漿MR-proADM濃度は、専用ソフトウェアで測定したペナンブラ容積と相関(n=7,相関係数 0.79,P=0.036)していることも判明した。

研究では、世界で初めて、MR-proADMが超急性期脳梗塞におけるペナンブラを反映する血中バイオマーカーである可能性が高いことが明らかになった。MR-proADMをペナンブラバイオマーカーとして確立できれば、血液検査によって発症早期の脳梗塞診断や再灌流療法の適応判断に用いることができる可能性がある。「研究結果は、脳梗塞の診療および予後を劇的に変化させ得る重要な知見と考えられる」と、研究グループは述べている。

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