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潰瘍性大腸炎や大腸腫瘍、免疫細胞上のDCIRが治療標的となる可能性-東京理科大

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2022年08月08日 AM11:52

骨代謝制御に重要な「」、腸管免疫に果たす役割は?

東京理科大学は8月3日、C型レクチン受容体の一つである樹状細胞免疫受容体(DCIR)を欠損させたマウスが、ヒト潰瘍性大腸炎のモデルであるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導大腸炎に対し、耐性を示すことを発見したと発表した。この研究は、同大生命医科学研究所実験動物学研究部門の岩倉洋一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cell Reports」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

研究グループは以前の研究で、独自に作製したDCIR欠損マウスが自己免疫を発症すること見出していた。また、DCIRが樹状細胞における抗原提示を制御する上で、重要な役割を担っていることを明らかにしていた。

DCIR欠損マウスは骨代謝異常を示すことから、DCIRは免疫システムと骨代謝系を制御する生体システムの維持に極めて重要な分子であると考えられる。しかし、腸管免疫は他の臓器の免疫制御機構とは大きく異なっており、DCIRが腸管免疫に果たす役割はこれまで解っていなかった。そこで、今回の研究では、DCIRの腸管免疫における役割を解析した。

DCIR欠損マウスは、DSS投与で大腸炎を誘導した際に症状が軽くなることを発見

DSSを含む飲用水をマウスに飲ませることで、ヒトの潰瘍性大腸炎に似た大腸炎をマウスに誘導することができる。このようにして大腸炎を誘導したところ、DCIR欠損マウスでは野生型マウスに比べ、炎症の程度が軽いことが判明した。

このとき、大腸での遺伝子発現を解析すると、DCIR欠損マウスではIL-17、IL-6、、TNFなどの炎症性サイトカインの発現が低下するとともに、GM-CSFの発現が亢進していた。また、ClaudinやOccludinなどのタイトジャンクション構成タンパク質の発現も亢進していたという。

特に強い発現誘導が見られたGM-CSFは、IL-1βの刺激によって3型自然免疫リンパ球(ILC3)から産生され、STAT5のリン酸化促進を介して、IL-17などの炎症性サイトカインの発現を阻害し、これにより大腸炎を抑制することがわかった。

DCIR欠損<TLRシグナル<IL-1β<ILC3からGM-CSF<タイトジャンクション促進<大腸炎抑制

DCIRは、障害を受けた腸管上皮、あるいはそこから浸潤した腸内細菌からの刺激によって生じるトル様受容体(TLR)の細胞内活性化シグナルを負に制御している。DCIR欠損マウスでは、この制御がはたらかないため、TLRシグナルにより過剰にIL-1βが産生され、ILC3から過剰にGM-CSFが産生されたものと考えられる。

GM-CSFを野生型マウスに投与すると大腸炎が抑制されることから、過剰のGM-CSFが他の炎症性サイトカインの発現を抑制するとともに、タイトジャンクション構成成分の発現を誘導することによって細胞間接着を促進し、大腸炎を抑制していることが示唆された。このような現象は、GM-CSF産生細胞であるILC3が腸管に特徴的に豊富に分布しているために起こると考えられる。

DCIR欠損/阻害マウス、同様のメカニズムでAOM-DSS誘導の大腸腫瘍も抑制

このようなGM-CSFの過剰産生は、DCIR欠損マウスをアゾキシメタン(AOM)とDSSで処理したときにも見られ、同様に炎症が抑制される結果、大腸腫瘍の発生が抑制されることが示唆された。

また、DCIRのリガンドであるアシアロ2本鎖N型糖鎖(NA2)に対する抗体をDSS、あるいはAOM-DSSで処理した野生型マウスに投与すると、DCIRとNA2の結合が阻害され、大腸炎や大腸腫瘍の形成が阻害されることが明らかになった。

DCIR阻害が炎症性腸疾患や大腸腫瘍の新たな治療法となる可能性

今回の研究成果により、DCIRシグナルが腸管で炎症や発がんを助長していることが明らかとなり、DCIRを阻害することによって、潰瘍性大腸炎や大腸腫瘍を抑制できる可能性が示唆された。

「実際、DCIRのリガンドであるNA2に対する抗体を投与すると、DCIRとNA2の結合が阻害され、大腸炎や大腸腫瘍の形成が阻害されることから、本研究の成果は炎症性腸疾患や大腸腫瘍に対する新たな治療法の開発につながるものと考えている」と、研究グループは述べている。

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