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「11β水酸化酵素欠損症」に対する遺伝子治療モデルを開発、世界初-成育医療センター

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2022年08月04日 AM10:30

2ベクターを用いた遺伝子治療はCAH全てに対して効果があるのか?

国立成育医療研究センターは8月2日、先天性副腎皮質過形成症()のタイプの1つである「」に対する新しい遺伝子治療モデルを開発したと発表した。この研究は、同センター内分泌・代謝科の内木康博医長、分子内分泌研究部の深見真紀部長らのグループによるもの。研究成果は、「Human Gene Therapy」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

CAHは診断後、すぐにステロイド薬の投与を開始し、その治療は生涯にわたる。しかし、ステロイドの副作用が起きないように投与量を調整するのは大変難しく、現在もステロイドの副作用の少ない治療を目指し、さまざまな治療方法が開発されつつある。

2016年には、CAHで最も多い21水酸化酵素欠損症マウスの筋肉内に、血清型2型AAV(AAV2)ベクターで遺伝子を導入する遺伝子治療を、同センターが世界で初めて成功させた。しかし、ヒトの細胞で効果があるのか、欠損する酵素の種類により6つのタイプがあるCAH全てに対して効果があるのかは明らかになっておらず、その解明が求められていた。

作製した11β水酸化酵素欠損モデルマウスで、遺伝子治療がほぼ全てのCAHに有効である可能性を確認

研究グループは今回、先天性副腎皮質過形成症(CAH)の新たな遺伝子治療モデルを開発した。

まず、11β水酸化酵素欠損症の患者の線維芽細胞からiPS細胞を作製し、これを副腎皮質細胞に分化させた後に、血清型9型のAAV(AAV9)ベクターを用いて正常な遺伝子を導入したところ、酵素の働きが活発になり、本来作られるホルモンが増加した。

さらに、11β水酸化酵素欠損のモデルマウスを作製し、その副腎にAAV9ベクターで遺伝子導入したところ、著しい治療効果と、その効果が長期間にわたり有効であることを確認した。また、CAHの患者の皮膚から線維芽細胞を培養し、AAV2ベクターを用いて正常な遺伝子を導入することで、失われた酵素活性が回復することを、21水酸化酵素欠損症、17α水酸化酵素欠損症においても認めた。

これらの結果から、ほぼ全てのタイプのCAHに対して遺伝子治療が可能であることが世界で初めて明らかになった。

CAHに対するさらなる遺伝子治療の発展に期待

2016年の同センターの研究成果をもとに、米国では点滴を用いた独自の方法でCAHに対する遺伝子治療の開発が進み、第1相の治験が始まろうとしている。しかし、マウスの実験結果は、米国で行われている遺伝子治療の方法では、治療効果が短期間に終わる可能性を示しており、同センターが行った筋肉注射による方法が、より良い遺伝子治療法になる可能性がある。

さらに今回、CAHの大多数を占める21水酸化酵素欠損症以外のタイプでも遺伝子治療の可能性を示したことから、今後CAHに対するさらなる遺伝子治療の発展が期待できる。

「CAHに対する遺伝子治療が臨床応用できれば、ステロイド薬の量が減らせることで副作用が軽減できたり、万が一飲み忘れても副腎不全を防ぐことが可能になるなど、患者により良いQOLが提供できると考える」と、研究グループは述べている。

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