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新型コロナワクチン、「接種意向が1年で心変わりした」人の特徴や背景を調査-慶大ほか

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2022年07月25日 AM10:59

2021年2月と2022年2月に接種の意向について大規模調査

慶應義塾大学は7月22日、20歳以上の日本の居住者を対象に、新型コロナワクチンの接種意向に関する大規模な全国オンライン調査を2度実施し、この1年間でワクチン接種意向が心変わりした人の特徴についてまとめ、発表した。この研究は、同大医学部医療政策・管理学教室の野村周平特任准教授、ガズナヴィサイラス研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Lancet Regional Health – Western Pacific」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

国内で拡大しているオミクロン株は感染力が強く、感染拡大や重症例の増加が懸念されている。若年層でも感染後、重症化や後遺症が生じることもある。より効果的な治療法の開発や、治療薬の安定的な供給確保が課題である現状で、ワクチン接種は新型コロナ対策として重要な手段の1つである。

一方、ワクチン接種率の向上は世界的な課題だ。日本では一般接種が2021年6月頃から始まり、2022年7月現在、2回の接種完了者は国民の81%、3回目の接種に関しては62%と、まだまだ向上の余地がある。感染拡大は予断を許さない状況であり、ワクチン接種の着実な推進を図る必要がある。

研究グループが実施した調査は、1度目は一般接種が始まる直前の2021年2月、2度目(追跡調査)は2022年2月に行われた。1万9,195人の回答が得られた追跡調査の時点では、日本では3回目の一般接種が始まっていた。回答者を「接種しない・するかわからない」から「接種した・するつもり」へ心変わりした群をグループ1、「接種する」から「接種していない・するかわからない」へ心変わりした群をグループ2として、それぞれ分析した。

「接種しない・するかわからない」から「接種した・するつもり」に心変わり72.6%

2021年2月「接種しない・するかわからない」であった回答者8,077人のうち、5,861人(72.6%)が1年後「接種した・するつもり」に心変わりしていた。詳細には、「接種しない」であった回答者1,980人のうち、928人(46.9%)が心変わりし、「接種するかわからない」であった回答者6,097人のうち、4,933人(80.9%)が心変わりしていた。

グループ1に関して、クラスター分析を用いてアンケートの回答パターンが近い集団を特定したところ、回答者は次の特徴を持つ5つの集団に分けられることがわかった。(1)接種の利点を認識した、(2)身近な人の接種状況を知った、(3)接種の社会的意義を認識した、(4)ワクチンの短期的な副反応や安全性に対する不安が払拭された、(5)仕事や人間関係の都合(ただし、(5)は「接種しない」から「接種した・するつもり」に心変わりした人のみ)。

「接種する」から「接種していない・するかわからない」に心変わり3.9%

2021年2月「接種する」であった回答者1万1,118人のうち、434人(3.9%)が1年後「接種していない・するかわからない」に心変わりしていた。グループ2に関して、回帰分析を用いて、心変わりに関係する要素を特定したところ、「未婚である」「健康状態が悪い」「インフルエンザのワクチンを例年接種していない」「新型コロナの感染歴がある」「新型コロナの検査を受けたことがない」「新型コロナの感染対策をしていない」「どんな情報ソースを普段利用しているか(雑誌や一部SNS等)」などが認められた。

「職場からの推奨」、接種しないと判断が固かった人に対する接種促進に働く可能性

一般接種が初めて開始されたあたりで、接種意向やその関連要素を評価する研究は国内外で数多く行われた。一方、接種開始から1年という長期をフォローアップし、実際の接種経験やその後の意向を評価した研究はほとんどない。ワクチンが開発され世界に普及し始めた後も、変異株の出現やワクチン効果の減弱、治療薬の承認など、新型コロナを取り巻く状況は変化を続けている。その結果として、今回研究グループは、接種意向も大きく変化していること、さらにその背景となる特徴を、約2万人という大規模アンケートの結果から明らかにした。

「仕事や人間関係の都合」という特徴は「接種するかわからない」から心変わりした人には認められなかった一方、「接種しない」から心変わりした人に認められた。職場からの推奨も、当初から判断が固まっていた人において、接種促進に働く可能性がある。「医療従事者からの推奨」が、接種意向の心変わりに重要な役割を果たした可能性を指摘する米国やオーストラリアの研究があるが、日本における今回の研究では、その要素は特定されなかった。研究で明らかになった心変わりの背景にある特徴は、ワクチン接種をためらう人への接種促進を議論する際の重要な入口になると考えられる。

また、接種率の向上を目指す上で、人口の数%を占める、当初は接種を予定していたものの、最終的に接種を希望されなかった人々へのアプローチも大切だ。「新型コロナ感染歴があること」や「一部の情報ソース(雑誌や一部SNS等)の利用」が心変わりに関係していたことは、特定の人へのメッセージングのあり方を再考する必要があることを示唆している。

ワクチン・検査パッケージへの賛否は、接種状況で異なる

研究グループは、2度目のアンケート時、「ワクチン接種の有無(あるいは各種検査での陰性証明の有無)で、活動制限が変わること」に関して意見を募っていた。「接種した・するつもり」のうち49.3%が賛成、9.1%が反対、41.7%がどちらとも言えない、という回答だった。また「接種していない・するかわからない」のうち9.6%が賛成、44.5%が反対、45.8%がどちらとも言えない、という回答だった。

接種や検査証明の利用は、接種に肯定的な人にとっては支持される一方、接種をためらう人においては、接種への抵抗をより強める可能性を示唆する報告もある。接種をためらう人へは協調的な働きかけが必要であり、ワクチン・検査パッケージは、ためらう人の不平等が大きくならないよう慎重に行う必要がある。

「世界的なワクチン接種促進の取り組みを成功させるためには、いかにしてワクチンを受け入れていただくか、そのための取り組みを強化する必要がある。今回の研究結果は、今後のワクチン接種を通じた新型コロナ対策の効果を高めるための一つのエビデンスになると考える」と、研究グループは述べている。

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