医師主導治験24週目までの結果により、2021年保険適用
東京大学医学部附属病院は6月29日、全身性強皮症(以下、強皮症)に対する多施設共同医師主導治験(治験責任医師・調整医師:吉崎歩講師)を行い、B細胞除去薬であるリツキシマブの長期(48週間)にわたる有効性と安全性を証明したと発表した。この研究は、同病院皮膚科の佐藤伸一教授、吉崎歩講師、江畑慧助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Lancet Rheumatology」オンライン版に掲載されている。
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強皮症は、皮膚をはじめ、内臓を含めた全身に、線維化病変を来す、膠原病に属する自己免疫疾患。国内には、少なくとも2万人以上の患者が存在すると推定されており、診断基準を満たさない軽症例を含めると4万人以上が罹患していると考えられている。病気の原因は不明で、根本的な治療は存在せず、厚生労働省が定める指定難病に認定されている。未治療のまま放置すると、症状がしばしば進行し、特に肺線維症と呼ばれる肺に生じた線維化病変は、ときとして致命的となる。
佐藤伸一教授らは長年、強皮症の発症と進行には、白血球の一種であるB細胞が関与していることを多くの研究によって示してきた。そして、吉崎歩講師らを中心に行われた多施設共同医師主導治験によって、リツキシマブはプラセボと比較して、主要評価項目として設定された皮膚硬化の指標であるスキンスコアと、副次評価項目として設定された肺線維症の指標である%努力性肺活量を有意に改善することが証明された。この結果により、日本ではリツキシマブが強皮症の治療薬として2021年9月に保険適用となっている。この医師主導治験は、24週間の二重盲検期と、これに続く24週間の実薬投与期から構成されていた。
医師主導治験で、これまでより長期間(48週間)の有効性と安全性を示す
今回の医師主導治験では、実薬投与期におけるリツキシマブの有効性と安全性が評価された。二重盲検期にリツキシマブが投与されていた群において、実薬投与期においても皮膚硬化と、肺線維症の指標である%努力性肺活量は、引き続き改善を認めた。
そして、二重盲検期にプラセボが投与されていた群では、それまで悪化を認めていた皮膚硬化と%努力性肺活量が、実薬投与期において改善を示した。実薬投与期における有害事象は二重盲検期と同程度であり、リツキシマブの投与回数に比例した有害事象の増加は認められなかった。
今回の研究によって、半年ごとのリツキシマブの反復投与は、さらなる皮膚硬化と肺線維症の改善もたらす可能性が示されたことになるという。なお、今回の治験では、二重盲検期を終えて実薬投与期に移行していない被験者の盲検性を維持するために、盲検解除は全ての被験者が長期投与期を終えるまで行われなかった。
今後、さらに長期間にわたる検討を
日本においてリツキシマブは強皮症の治療薬として保険適用となったが、その一方で、治験の枠組みの中で、リツキシマブを強皮症に対して長期間用いた研究は存在しておらず、その有効性がどの程度の期間維持され、また、長期間用いた場合の安全性は不明なままだった。このことはリツキシマブを治療として選択する際に、患者へ大きな不安を与えることになる。今回の研究によって、これまでより長期間(48週間)における有効性と安全性が示されたことは、患者と医師が治療法を選択する際の一助となると考えられるが、今後さらに長期間にわたる検討を行っていく必要がある、と研究グループは述べている。
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