矢野経済研究所は2012年6月から7月にかけて「2010年地方公営企業年鑑」に掲載されている病院を有する地方公共団体656のうち回答を得られた143の病院を対象に調査を行った。
調査方法は矢野経済研究所の研究員による直接面談と、郵送、電話またはメールによる調査と文献調査を併用して行われた。
この調査は自治体病院の経営と改革意向に関する調査であるが、3つの興味深いことが明らかになった。1つ目は、半数以上の自治体病院で経常利益が黒字であったがその勢いは下り坂状態にあるということである。
黒字が56.6%という高い数字を現わしていても、昨年度に比べると「経営状況が改善した」と答えた病院はその56.6%の病院のうちわずか51.0%であったという。
昨年度は実に72.7%の病院が「経営状況が改善した」と回答していたのである。たとえ、黒字であったとしても、その経営状況が改善していないならば、今一度収支を見直す必要がある。
2つ目はその経営状況を左右する要因が明らかになったことである。入院診療単価、人件費率、病床稼働率が各病院の経営状況に大きな差をつくることがわかった。
経営の改善が見られた病院は入院診療の単価向上がそれに貢献したと述べているが、経営が悪化した病院は人件費をあげたことと、病床稼働率が悪かったことを原因にあげている。
3つ目に明らかになったのは、今後の自治体病院の将来の課題である。現在、多くの自治体病院が将来における医師不足と財源不足を不安材料にあげている。
国と、地方自治体それ自体が財政難であるために起こる問題であると考えられる。国や自治体の力を借りずに経営できる能力のある病院と、民間の医療法人などに経営を委託する病院この2つのカテゴリに分けられる病院が今後は増えていくと予測されている。
▼外部リンク
矢野経済研究所ホームページ
http://www.yano.co.jp/
矢野経済研究所 アンケートの詳細
http://www.yano.co.jp/press/pdf/977.pdf